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令呪は一人のマスターにつき三画現れる。 聖杯に選ばれたマスターたる証であり、一画一画がサーヴァントに対する絶対命令権となる。 また令呪を消費することでサーヴァントを強化し、通常の物理法則をも無視した行動をとらせることも出来る。 すべてを失えば聖杯戦争からの脱落を意味するため、聖杯戦争中、2度までしか使うことは許されない。
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私の名は木山春生。大脳生理学者で専攻はAIM拡散力場。学園都市の能力者が無意識下で周囲に放出している力の事だが… これを読んでいる君たちにはいらぬ説明だったな。さて、そんな一介の脳科学者に過ぎないこの私が今回のとある大きな出来事についての語り部の一翼を担うことに ついて読者諸君はどう思うのだろうか。まあ、一人ひとり抱く思いは違うだろうが、どうか最後まで見届けて欲しいものだ。 今私が何をしているかというと、研究室を出て、地方の小さな都市、冬木市という街に諸事情にて出張に出ているところだ。 私の愛車である青いボディのランボルギーニ・ガヤルドで高速道路を1時間弱走り、県道を30分くらいだろうか、走らせたところで目的の街、冬木市にたどり着く。 私の出張中の住まいは、冬木市の中心部に位置する6階建てのマンションということになっている。地図をもとに車を走らせ、そのマンションの位置を 確認したのち、図書館へと向かい資料集めへと取り掛かる。―冬木市中央図書館。県内でも有数の蔵書量を誇り、わざわざ市外からここに来る者も多い。 …と入り口すぐ近くの案内に記されてあった。まあ、仕事を進めるにあたって蔵書量が多いに越したことはない。 私は、図書館内に足を踏み入れると目的の資料を集めに、脳科学を扱った本を揃えているコーナーへと向かった。私の研究の参考になりそうな本を3,4冊見繕い 図書館中央のテーブルへと向かう。席についていた人数はまばらで、別にどこでもよかったのだが、ある一か所が私の目に留まる。 車椅子の少女ともう一人の少女が楽しそうに語らいながら勉強をしていたのだ。その光景にかつて私が学校で教鞭を振るっていた時のことを思い出し、 どこでもいいのならあそこにすればいいという結論に達し、その車椅子の少女の隣まで歩を進める。 「隣、座ってもいいかね?」 「あ、はい、ええですよ」 と、やんわり優しい関西弁で了承を得、私は隣に腰を下ろすと鞄からノートパソコンを取り出し、先ほど持ってきた資料を基に仕事を進める。 順調な滑り出しだな、一日目の進行度としては上出来だろう。しかし… 「なあすずかちゃん、この問題どうやって解いたらええんやろうか?」 「どれどれ…ん~、私にもちょっとわかんないなあ…ごめんね、はやてちゃん」 どうやら隣の少女たちはわからない問題に苦戦しているようだ。解らないことを解るようにしてきたからこそ今日の人類の発展があるのだが… ここはそんな大層な規模の話を持ち出す場所ではないな。元教師として、ここは助け舟を出すことにしよう。 「君たち、困っているようだね。その問題は、こうすればいいんじゃないかね?」 「あ、そっか、お姉さん、ありがとな」 「なに、気にすることはないさ。これでも元教師だから。ときに君たちはいつもここで勉強してるのかね?」 「はい、よくはやてちゃんと二人でここで楽しくおしゃべりしながらやってますけど」 「そうか。私も出張中でしばらくはここで仕事を進めることになるからまた顔を合わすこともあるだろうな。その時はよろしく頼むよ」 「あ、はい。こちらこそ」 私は彼女たちに背を向けて手を振り、先ほど持ってきた本を返しに行く。あとは自室に戻り報告書をまとめるだけなのだが… ここで妙なことに気付く。持って行ったときの本の隙間と、今返すにあたっての本の隙間の数が一致していない。一冊入れられないのだ。 脳科学などという難しい命題の本を先ほど席についていた客層が持っていったり、戻したりするとはとは考えにくいからここで考えられるのは一つしかない。 誰かが別のコーナーの蔵書を間違ってここにしまった、ということだろう。そういうことならば背表紙のタイトルでそれとわかる本があるはずだ。 そしてそれはすぐに見つかった。タイトルは『魔術師と聖杯戦争のあらまし』。 その本を棚から抜き取り、持っていた脳科学の本を出来た隙間にしまう。さて、この本は果たしてどのコーナーに持っていけばいいのか… この本が本来あるべき場所を探すまでの間、私はその本を読みながら歩き続けた。かいつまんで言うと、魔術師たちが過去の英雄たちを英霊として召喚し、 それらを下僕として使役、戦わせることで最後に残った一組があらゆる願いを叶えられる聖杯を手にすることができ、この聖杯を巡る戦いを『聖杯戦争』といい、 数十年に一度、この冬木の地で行われるのだそうだ。 この科学の世の中に魔術師だの英霊だの聖杯だの絵空事にもほどがあると一笑に付してしまう。このような荒唐無稽な内容の本まで置いてあるとはさすがというべきだ。 しかし、この類の本が置いてあるコーナーをしばらく彷徨ってみても一向にしまえそうな場所は見当たらない。 仕方なく、蔵書検索用パソコンにタイトルを入力し、検索をかけてみるのだが…検索結果に表示された数値は『0』だった。 タイピングミスかと思い、もう一度背表紙を確認したところで、この本が図書館の蔵書ではありえないことに気付いた。 本来図書館の蔵書には背表紙に識別番号が書かれたラベル、裏表紙には貸出記録を管理するためのバーコードなどが張り付けられているものだが、 この本はそれらしきものが一切見当たらなかった。つまりこの本は外部の人間が、何らかの目的を持ってこの図書館に持ち込んだということになる。 この本に対して得体の知れぬ何かを感じつつも、私はこの本を自室へと持って帰ることにした。 すでに生活様式が一通りそろえられたワンルームマンションの一室で、私はこの本を更に熟読する。 『通常、英霊を召喚する際にはその英霊に纏わる触媒が必要となる。それがない場合は、召喚者(マスター)の性質に最も近しい英霊が下僕(サーヴァント)として召喚される。 召喚が完了すると、召喚者の手の甲には令呪というサーヴァントに対する絶対命令権を宿した紋章が浮かび上がり、これが強大な力を秘めたサーヴァントを 人間が御する唯一のカギである』 なるほど…当初は荒唐無稽だと一笑に臥してしまったがここまで詳しく書かれていると現実味を帯びてくるというものだ。 そして私は次のページをめくったのだが、その刹那、ページに挟まっていたあるものが床に敷き詰められていたカーペットにはらりと落ちる。 これは…束ねられた獣の毛だな。色は…銀色に輝いている。それを手にした瞬間、私の頭の中にある考えがよぎる。 万に一つ、この本に書かれている内容がすべて真実だったとしたならばこの獣の毛を触媒とすることでサーヴァントを召喚できるのではないかと考えたのだ。 それが実現すれば、この本をあの図書館へと持ち込んだものの正体も大体の見当は付く。この本を最初に手にしたものにこの毛を触媒とすることで サーヴァントを召喚させ、聖杯戦争へと参加させる腹積もりなのだろう。そして聖杯戦争を開戦させ、他のマスターとサーヴァントをすべて打ち倒し 聖杯を手にし、あらゆる願望を実現させる…面白い。どこの誰だか解らんが、君の仕掛けたその勝負、私が買おうじゃないか。 その本に記されていた通りの魔方陣を紙に描き、その中央に白獣の毛を置き、召喚のための呪文を詠唱する。 「――――告げる。 汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。 されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者――。汝三大の言霊を纏う七天、 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」 瞬間、室内だというのに疾風が吹き荒れ、周囲の家具を大きく揺らす。その疾風は魔方陣の中央で一つの渦となり、その渦も一瞬で立ち消え、現れたのは… 髑髏をモチーフにしたエンブレムで前面部が装飾された大きな帽子と、口元まで覆い隠す様な大きな襟のついた白いコートを身に纏い、 腰のあたりには異常に銃身の長い拳銃を右と左に一つずつ下げた大男だった。 眼前で起きたあまりの出来事に私は言葉も出ないが、それと同じように眼前の大男も一言も発さない。すでに疾風も静まり、部屋の中を沈黙が支配する。 向こうはどうやら何もしゃべるつもりはないようだ。ならば仕方ない、こちらから行くしかあるまい。 「君が、私のサーヴァントなのかね?」 その男は、ただ無言でうなずくのみ。驚いた、どうやら本当にサーヴァントを召喚してしまったようだ。それならば次に確認すべきは… 「君のサーヴァントのクラスは、バーサーカーかね?」 やはり無言で一つ頷くだけ。やはりな。獣の毛を触媒とすることから召喚されるのはバーサーカーだと予想はしていたが… おもむろに自分の手の甲に目を落とす。そこにはくっきりと浮かび上がった幾何学的な模様を取った痣、すなわち令呪があった。 これから先の聖杯戦争に打ち勝てばあらゆる願いを叶えられる。そう、『子供たち』を救うためにも、私はこの戦いに勝たなくてはならない―!
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【英数字】【あ行】【か行】【さ行】【た行】【な行】【は行】【ま行】【や行】【ら行】【わ・を・ん】 英数字の本編用語集 あ行の本編用語集 か行の本編用語集 【クラス】 さ行の本編用語集 【聖杯】 【聖杯戦争】 た行の本編用語集 な行の本編用語集 は行の本編用語集 【宝具】 ま行の本編用語集 や行の本編用語集 ら行の本編用語集 【令呪】 わ・を・んの本編用語集 .
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遊技盤の主は盤上を支配するのか(後編)◆BEQBTq4Ltk ← 部屋に通されるまでに彼らの間に会話は発生せず、ただ黙って足を進めるのみ。 広川の導きにより案内されたタスクであるが、近場にあった椅子を引き寄せ腰を落とす。 周囲を見渡せば壁一面には巨大な液晶が掲げられており、どうやら会場を監視する一室のようだ。 そこにはヒースクリフの姿も映されており、タスクを除く八人の生存者の現状が確認出来る構図となっていた。 「よかった……無事だったか」 半ば脅しの形で言い包めた足立透に不信感が残っていたが、彼は役割を全うしたようだ。 錬成陣の地点にて雪ノ下雪乃、佐倉杏子と一緒に行動している姿を確認しタスクの表情に笑顔が浮かぶ。 しかし、安心することは出来ず。脳内を切り替えると視線は目の前に座る広川を捉えた。 「これからどうするつもりだ。此処まで辿り着いたなら最後まで乗ってやる……次はどうすればいい」 「お前達の予定からして次は鋼の錬金術師による首輪を外すことが重要……ならば、少しは時間を稼げ」 「だからこうしてこの部屋に案内したんだろ。問題はその後だ……お父様? と次に遭遇した時が問題だ」 己の役目は黒幕を欺くこと。 お父様の本拠地に結果として招かれたタスクは唯一、自由に主催へ干渉出来る立場となっている。 無論、言葉を掛けるだけであり、実際に戦局を左右するような権限は持ち合わせていない。 「問題……ならば遭遇しなければいい話だろう」 「……お前は何を言っているんだ」 「この場から抜け出す方法がある。勿論、その準備は最初から出来ている」 広川の言葉を鵜呑みにしては都合の良い方向――主催にとって。 流されるがままになってしまう恐れがあり、抽象的な表現こそ多いがタスクは全ての欠片を拾い上げるように耳を澄ます。 「一応聞こうか。どうやって俺は帰る事が出来る」 「簡単だよ。扉を抜ければそれで終了さ」 質問をした所で、的のない答が返ってくることは予想していた。 切り口を変えてみるかと考えるも、それは無駄な所要だろうとも思ってしまう。 広川の真意を見出すことは不可能なのか。それとも、ヒースクリフのような頭脳に長けた存在ならば可能なのか。 「気になっていたことがある。一つじゃないけど、ヒースクリフさんはどうして首輪を解除されているんだ」 「彼は彼女のお気に入り……と云うよりも、彼だから外れていると言っていいかもしれないな。 私の他にも此度の運営に関わっている存在がいてな。彼女は彼女で動いているのさ――私と同じように」 「どうして黙っていたんだよ……って言っても期待するような答は返って来ないよね。 分かったよ、元々、三つの計画が同時に動いているから他にも内通者が居たことは気になっていたんだ」 「三つ……?」 「俺がこうして時間を稼いでいること。エドワード・エルリックが向かっていること。ヒースクリフさんがもう一人の内通者と接触していること」 なるほど。と、短く呟いた広川は何かを思い返すような遠い目で液晶を見ていた。 タスクの視線も釣られて推移し、そこには御坂美琴以外の参加者がある程度纏まっている光景が映し出されていた。 雪ノ下雪乃、足立透、佐倉杏子。 ヒースクリフ、黒、エンブリヲ。 比較的彼らに近いエドワード・エルリック。 そして一人外れた場所に居るが、着実と近付いている御坂美琴。 ――俺が失敗したら皆に迷惑が……さて、どうしようか。 悩む時間すら惜しい。何せお父様との謁見まで――残り数分。 ◆―― 仕込みの時は終了し、残るは実行のみ。 最後の鍵を握るは鋼の錬金術師。 今宵、彼が欺くは誰になるのか。 全ての事象は因果によって構成され、遊技盤の主はほくそ笑む。 足掻け、足掻け、足掻け。 宙に上げられたコインの結果など、最初から決まっているのだ。 ――◆ 死者の名前が告げられるよりも時は遡る。 学院内のとある一室に身を寄せたエドワード・エルリック。彼の視界に飛び込んだのは発光する四角形状の機械であった。 錬金術が発達した彼の世界に於いて、パソコンなる文明は登場していない。未知なる存在に警戒心が最大限にまで引き上げられる。 予想を立てるならば参加者に支給されているデバイスに近い代物だろう。 液晶と呼ばれる表面に並べられた文字列。真偽は不明であるだ何者かが鋼の錬金術師に語り掛けているようだ。 近場にあった椅子を引き寄せるとそれを液晶の前方に置き、腰を下ろした段階で彼は腕を組んだ。 画面の向こうから接触を図る存在は何者なのか。 お疲れ様などと言っていることから、参加者よりも運営側に近い存在であることが伺える。 そして、運営側の存在などエドワード・エルリックからしてみれば一人しかおらず、脳内に浮かび上がる人物像は自ずと彼を形成する。 ――広川が今になって俺に接触を……? 疑問は残る。はたして本当に運営は広川一人で行っているのか。 名簿に記載されていた複数のホムンクルスが闇に潜むあの存在を連想させた。しかし、エンヴィーは今回の経緯を知らないような素振りをしていた。 こちらを騙すための演技の可能性もあるが、あの状況で嘘を吐くだろうか。敵ながらにしても、思う所はある。 ならば彼らホムンクルスは親から見捨てられたのか。その可能性は大いにあるだろう。かの造り手が情など持ち合わせている筈もない。 会場の中で遭遇し交戦、或いは共同戦線を張ったホムンクルス達。 エンヴィーとプライドは殺し合いの真理を知らずに、エドワード・エルリック達と同じように何も目的を掴めぬまま放り投げ出されたようだ。 彼の睨みではホムンクルスの親玉が関係していると思い込んでいた。美樹さやかを救出した際に辿り着いた疑似・真理の空間からして錬金術に博識のある者が絡んでいるのは間違いないだろう。 依然として主催者と言い切れる存在は広川のみであり、倒すべき相手の全貌すら掴めぬまま、今を生きている。 【突然で驚いているかもしれないが、君に話がある】 さて、どうしたものかと画面の向こうにある真意に想いを傾ける。 エドワード・エルリックに残された時間は少ない。学院内を捜索し高坂穂乃果を見付ける必要がある。 こんなことで時間を消費する暇など無いが、運営側から接触された時点で行動を監視されていると考えて間違いないだろう。 下手な動きをすれば己の生命、下手をすれば仲間の生命にまで危険が及ぶ可能性も考慮する必要がある。 現に学院内に放置されていた少女達の死体と繋げられた人形。その存在が彼を更に苦しめる。 【そう固く構える必要はない。話というのも君達にとってはメリットの塊だ】 こちらの様子が見抜かれていることから監視されていることは確定である。 「……聞こえてはいるんだよな?」 畏まる必要は無い。たとえ相手に生命を握られていようと、媚びることなどするものか。 此度の原因を持つ相手、一瞬たりとも頭を下げるなど死んでも有り得ないだろう。 【その認識で構わない】 「じゃあお前は広川ってことでいいのか? それとも俺の知らない別の人間か……それとも、まさかお前はホムンクルスの――」 【その質問には全部違うと答えよう。重要なことはそこじゃない】 「正体の掴めない奴の言い分なんて簡単に信じれるわけあるかよ」 【こちらも時間が無い。手短に要件を済ます】 「て、てめぇ……っ!」 歩み寄ろうとしない液晶の向こう側に対し、怒号を響かせながらエドワード・エルリックは立ち上がる。 椅子が倒れ無機質な冷たい音が部屋中を満たす中、主催者の人間は何も変わらずに文字列を表示し続ける。 【信用するかどうかは君しだいだ。だが、藁にも縋る思いとは正にこのこと】 わざわざ反感を買うような単語の運び方にエドワード・エルリックの苛立ちは更に募る。 握られた拳は震えており、放つ対象もぶつけるべき存在もいないが故に、怒りは行き先を失う。 「じゃあ話してみろよ。時間が俺も……誰もが同じなんだ。つまらない話だったらぶっ飛ばす」 【話が早くて助かる。君達参加者の首輪を外す手助けをしてやろうという提案だ】 「…………………………は?」 【悪くない話だろう。君達の生命を握るその忌々しい枷を解放してやる術を教える】 次の言葉が脳内に構成されつつあるが、実際に喉元を通ることは無かった。 情報の処理は追い付いている。しかし、あまりにも必要であろう過程を無視した結果の受け入れに時間を要する。 画面の向こう側から示された術は誰もが求め、誰もが諦めた重要課題の一つだ。 「そんなことが出来るならとっくに外している、俺だって何度も試した」 【どれだけ試そうが無駄だ。最初にこの箱庭に施された仕掛けを解除しないことには始まらん】 「仕掛け……? 何を言っているか分からないけどよ、説明はしてくれんだろうな」 首輪の解除に対し行動を取った参加者は多く存在する。 手立てこそ錬金術や超能力、魔法と多岐に渉るが誰もが失敗の壁に到達し、その解除を諦めた。 会場に施された仕掛けが原因となっているようだが、言葉そのものを聞いた段階でまともな判断など不可能である。 内容を知らされずに標題だけが判明している資料への読み込みなど当事者で無ければ分からない。それと同じだ。 言葉一つで納得出来るような状況か。答えは否。エドワード・エルリック以外の存在であろうと返しは同一の旨を含むだろう。 信頼の無い相手、根拠の無い希望、説明すらされない真実。 鵜呑みに出来る許容範囲を超えている。超えるというのも優しいぐらいだ。そもそもとして枠を超越している。 【君も見たことがあるだろう。会場に刻まれた錬成陣に心当たりは】 DIO、後藤、御坂美琴、キング・ブラッドレイ――そしてセリム・ブラッドレイ。 一堂に実力者達が介したあの激戦直後の出来事である。 佐倉杏子、ウェイブ、田村――それにイリヤ。多くの参加者を巻き込んだ死の螺旋。 「俺が読み取れなかった文字に仕掛けがあるのか……?」 【それも含めよう。しかし、根本的に問題があった。仮に錬成を発動したところで波動が流れない仕組みになっていたのだ】 時間軸を超えた先、調律者とゲームマスターが到達した境地へと鋼の錬金術師も手を掛ける。 箱庭の外を包む外壁の真意など、収納された駒同然である彼らに見抜くことは不可能である。 全知全能を誇る千里眼を以てしても、枷が嵌められ全ての色素が濁されたような偽りの空間の前では役に立たないだろう。 信じるに値する情報か。 真偽はどうであれ価値を見出せるのか、掌の上で踊っているだけに過ぎないのか。 「知ったような口で……全部知っているのは本当かもしれない。だけど、俺が素直にはいと頷くと思っているのか?」 【君の言うことは最もだが、そうだな。放送が終了してから二十分後にまた声を掛けさせてもらう】 開幕のベルが鳴り響いてからどれだけの時が経過しただろうか。 上条当麻の鮮血がまってからどれだけの死者が生まれたのか。 エドワード・エルリック。 彼はどれだけの生命を、救えなかったのか。 死神が薄気味の悪い笑顔を浮かべながら、知りたくも無い答案用紙をつまみ上げた。 この世から消失した欠片を追い求めた。 手を伸ばせば光の先にある希望を掴み取れると己へ暗示を掛けていた。 決して叶わぬ幻想だろうと、意思が折れぬ限りは無限の可能性を秘めていると。 嗤わせてくれる。 現実はどうだ。残り生存者八名。 白井黒子から託された高坂穂乃果の名前が告げられ、放送から抑揚の感じられないせせら笑いが会場を包み込む。 救うなど飛んだ笑い話だ。 現実を見ろ。志がどれだけ高かろうと、お前は何を残したのか。 友も、仲間も、何もかも。お前だけを残して全てが消えてゆく。世界は停滞せず、無慈悲にも彼を過去の人間へ落とし込む。 あの子は死んだ。彼も死んだ。そして彼女もまた、この世を去った。 死者の声など二度と聞けず、耳に届く音叉は所詮亡者の嘆き声。 生としての形を保っていた頃の面影など無く、死人は黙り土へと還り生者の足に絡み付く。 「――――――――z______ッ」 教室内に声にならない叫びが澄み渡り、やがて後を追うように机へ拳を叩き付ける音が響く。 鋼の錬金術師の背中がやけに小さく見え、決して後に戻ることの出来ない永遠の後悔が彼を深い海の底へ誘うようだった。 一度墜ちてしまえば、再び這い上がることは簡単な事にならず。 後悔と失念に飲み込まれ二度と光を終えぬ身と成り果てるだろう。そして意味も無く現世を徘徊し、やがて人生に欲を感じずその生涯を自ら終える。 高坂穂乃果は死んだ。 白井黒子に託された彼女は既にこの世を去った。 ウェイブ、田村玲子も死者の呼び声に導かれ、彼が腕を伸ばした先に掴むは空白の刹那。 己すら満たすことの出来ない篝火。払いのけるにも現実は死者の存在を譲らず。 【辛いこともあるだろうがここで立ち止まる余裕は君にあるだろうか】 「……言われなくても分かってんだよ、誰が止まる、もんか……っ」 絞り出したかのように語尾にまで息が届いておらず、決意の表れとは到底呼べないような灯火の声。 震えが止まらない。彼の身体は懺悔に塗れ己の不甲斐なさに腹を立てているだろう。 自分で自分を罰したい程に、この身で許されるならば彼は自らを貶めるだろう。 けれど。 「俺にしか出来ないことがあるって言ったよな。大佐もキンブリーもいなくなっちまったならもう、俺しか錬金術師はいない」 【心変わりか】 「勘違いすんじゃねえ。お前が俺を利用するように俺もお前を利用してやるだけの話だ。 首輪を外せば俺達は一気に自由の身へ近付く。この機会を逃したら今まで死んでいった奴らに会わす顔が――ご託はいいから、話してもらおうか」 全てを利用しろ。たとえ相手が敵であっても。 死中の中で活を見出だせ、奇跡とは諦めぬ者に降り掛かることから奇跡と呼ばれる。 【よろしい、ならば我々はこの時から共犯者となる。よろしく頼むよ鋼の錬金術師】 「……いいから」 【そうか。早い話は先と変わらない。君の力で首輪を外す――それだけだ】 「錬金術によって首輪が外せれるとして、何が方法なんだ。 ただの金属に戻す――って訳にもいかないだろう……まさか、そうなのか?」 錬金術が必要ならばまずはその用途、価値を見出す必要がある。 挑戦など既に過去の遺産であり、画面の奥に居座る人物の語るロックとやらが解除された所でどうなるというのか。 【プライドとの戦いを思い出してくれ。要領はあの時と変わらない】 プライド――セリム・ブラッドレイとの戦い。 佐倉杏子と共に刹那とは云え共闘を果たしたホムンクルス。 後にイリヤ、DIO、後藤、キング・ブラッドレイ、御坂美琴を巻き込み、ウェイブや田村玲子も参戦したあの戦い。 真実を知る者からすれば要領はこの戦いと変わらない。 思い返せ、あの時に己が何をしたのか――けれど、真実は見えず。 最終的に意識を失ったあの戦局に通ずる事象が見出だせないのだ。何が隠されている。 【訂正しよう。今の君にとっては関係のないことだった。美樹さやかの時を思い出してくれ】 思考が纏まらない中、新たな情報だけが追加されてゆく。 真意は不明だがプライドとの戦いを振り返っても得るものは無かった。 ならば新たに示された美樹さやかの時――つまりはエスデスや御坂美琴との戦闘直前の錬成を指すのだろう。 あれは彼女が魔女として戦場に降臨していた時のことだ。 タツミから事情を聞き出し、事前に佐倉杏子と接触していたため持ち合わせていた魔法少女への知識。 美樹さやか本人の身体と魔女の残骸であるグリーフシード。そして生きている彼女の精神。 全てを繋ぎ合わせた結果、かつて弟の魂を鎧へ憑依させた錬成を基礎に行った奇跡の錬成。 辿り着いた先は疑似・真理の空間と呼ばれる心象風景の世界。 相対するは美樹さやかの内なる影――シャドウ。己とは異なる存在であり、己でもある仮面。 最後は彼女自身が己の仮面を受け入れることにより、奇跡を引き起こし魔女から現世へと帰還。 「俺を――俺達ごと錬成するつもりか」 プライドとの戦いを思い出せ。 正確に伝えるとなると、エドワード・エルリック自身が自身を錬成したあの瞬間を指していた。 しかし、それは正しき時間軸を進んだ鋼の錬金術師が知りうることであり、現在の彼はその事実を知らない。 【薄々は気付いていると思うがこの空間は普通じゃない。 通行料は首輪そのものが役割を果たすから心配する必要は無い】 そうなると少しだけ、僅かにだが希望は見えてくる。 手段としては賭けに近い。けれど、その賭けに乗らなければならない程に追い詰められているのも事実である。 美樹さやかの時でさえ分の悪い賭けだった。故に今回の賭けに怖気づくなど今更な話でもある。 「お前の言っていることは分かった。逆に聞くがそのロックって奴は大丈夫なのか」 【広川が手を打っている。安心してくれ】 「俺はお前も広川も信用ならねえ。何か一つでもいい、信頼に値する情報を明かせないのか」 「強気だな。その気になれば私は君の首輪を爆破出来るぞ」 「じゃあそうしてくれ。わざわざそっちから干渉してんだ、追い詰められているのはそっちも同じだろ」 残る材料は信頼。 元より利用されるならば利用してやるという魂胆だが、一つの条件すら不明な相手との共同戦線など巫山戯ている。 嘗てグリードと組んだ時も、グラトニーの中から脱出する際にエンヴィーと組んだ時も。 敵でありながら同じ目的のために手を組んだ時がある。現在の状況はこれらと変わらない。故に 「お前の目的は何なんだよ。俺に、俺達に力を、知恵を貸す理由はなんだ」 たった一つの欠片さえ証明されれば駒となってやる。 そして共同戦線を張るからには俺が死ねばお前にも死んでもらう。 『……ははっ、ごめんね。ちょっと手が塞がってたから』 「――――――お、女?」 一室に響いた声にエドワード・エルリックの身体が固まった。 広川と異なるとは聞いていたが、声色は自分と同程度ぐらいの年齢としか思えない。 「お前……女だったのか」 『性別は関係ないよね。さっきまでヒースクリフ達と会話してたから貴方とは文字で会話していたの』 「ヒースクリフ……生きているのか!?」 『まずはそこからか……そう、彼は生きている。そして首輪が外されているの』 「首輪が外されている――だから放送で名前が呼ばれたのか?」 『さすがだね。話が早くて助かる……彼らには貴方の役割を伝えて、錬成陣の場所に誘導済みだから』 「……俺がお前の話を蹴ったらどうするつもりなんだよ」 『蹴らない。貴方はこの提案を蹴らない……信じていたから』 どうやら自分の知らない所で既に引き返せない段階にまで話が進んでいるらしい。 ならば彼も覚悟を決めぬ訳にもいかぬ。元より腹は決まっているのだ、ここまで来れば運命共同体である。 「じゃあ俺は錬成陣を目指せばいいんだな? だけどよ、錬成をするって簡単に言うけどな……」 『分かってる。これから貴方のデバイスに各世界のデータなり必要な情報を送り込む。 辿り着くまでに一通り読んでくれれば問題ない……筈。あとは貴方次第だから頼んだよ』 「……どっちにしろ簡単に言うじゃねえかよ。それでいいのか? お前だってこんなことすりゃ広川――なあ、一ついいか」 彼女は口を揃えて錬成と言葉を紡ぐも錬金術師の立場からすれば式も成り立たぬ術など成功するものか。 必要な情報を送ると言われ、はいそうですかと二つ返事で答えれるならば世の中の生物全てが錬金術師になれるだろう。 それでもやるしかないのなら、やってやる。しかし、気になることが多すぎるのだ。 彼女が干渉すればそれは広川にとって裏切りも同然だろう。 「広川やお前以外にも俺達の敵はいる……よな」 『そうだね――お父様。こう言えば貴方には伝わると思う』 「……そうかよ」 嫌な予感とは当たるものだ。 エドワード・エルリックの額には汗が浮かんでいた。 ◆―― 欠片は全てに行き渡る。 これで正真正銘の運命共同体。 次なる行動はただ一つ。 約束の地へ急げ。 ――◆ 大地を駆け抜けろ。 建物を飛び出してから一切の休憩を挟まずに彼は約束の地を目指す。 『ホムンクルスが関わっていたことは不思議じゃないようね。深くは聞かない……でも急いで。 お父様はまだこの状況に気付いていないから。それでもいずれは気付く。時間を稼いではいるけど、それにも限界があるから』 デバイスの液晶に流される単語の羅列に目を通しつつ、脳内で処理するは未知の方程式。 通行料は首輪、行く先はかの空間。材料も人間も揃っている。あとはやるだけ、やるだけである。 『それと私の目的だけど――救いたい人がいる。殺し合いに関わっていながら巫山戯た意見だとは自分でも思っている』 ヒースクリフが生存しているとなれば己を含めて参加者は残り九名。 エンブリヲ、足立透、御坂美琴。立ち塞がる壁は今も生きており、その先にはフラスコの中の小人が構えている。 後に矛を交える相手であるが、首輪――生命を握られたまま戦闘となれば有無を言わさずこの世を去ることになるだろう。 『今はそれだけを信じてほしい。貴方が首輪を外すことに成功すれば黙ってでもお父様と衝突することになると思う。 その中できっと私は貴方達に会うかもしれない。その時は頭を下げて謝罪する――だから、今だけは信じて。私と貴方達は運命共同体だから』 この腕は誰一人として救えずに。 己だけが生き残り、託された少女すら救えずに参加者は残り九名にまで減ってしまった。 『貴方なら分かっていると思うけど、お父様がこの状況に気付いている可能性もある。だから、急いで』 もう、誰も失うものか。 この腕で救えるのならば、どんなに泥を被ろうが、血を流そうが。 最後まで抗い続け、黒幕を表の舞台に引き摺り下ろすまで。 『幸運を祈る――こんなことなんて言える立場じゃないけど、私は貴方が成功させることを祈っているから。時間があれば私とヒースクリフの会話を録音したデータも聞いてほしい』 意思が折れぬ限り、彼は最後まで挫けない。 太陽が天高く昇り、箱庭の会場を照らす中。 鋼の錬金術師は約束の地を目指し、大地を駆け抜ける。 【F-6/二日目/朝】 【エドワード・エルリック@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST】 [状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、精神的疲労(大)、全身に打撲、右の額のいつもの傷、黒子に全て任せた事への罪悪感と後悔、強い決意 [装備]:無し [道具]:デイパック×2、基本支給品×2、ゼラニウムの花×3(現地調達)@現実、不明支給品0~2、ガラスの靴@アイドルマスターシンデレラガールズ、 パイプ爆弾×2(ディパック内)@魔法少女まどか☆マギカ、千変万化クローステール@アカメが斬る!、学院で集めた大量のガラクタ@現地調達。 [思考] 基本:主催の広川をぶっ飛ばす。 0:西へ向かい、首輪を解除するために錬金術を行う。 1:大佐……。 2:前川みくの知り合いを探したい。 3:エンブリヲ、御坂、ホムンクルスを警戒。ただし、ホムンクルスとは一度話し合ってみる。 4:一段落ついたらみくを埋葬する。 5:首輪交換制度は後回し。 6:魔術を解析したい。発見した血の練成陣に、魔術的な意味が含まれていると推測。 [備考] ※登場時期はプライド戦後、セントラル突入前。 ※前川みくの知り合いについての知識を得ました。 ※ホムンクルス達がこの殺し合いに関与しているのではと疑っています。関与していない可能性も考えています。 ※仕組みさえわかれば首輪を外すこと自体は死に直結しないと考えています。 ※狡噛慎也、タスクと軽く情報交換しました。 ※エスデスに嫌悪感を抱いていますが、彼女の言葉は認めつつあります。 ※仮説を立てました。 ※お父様が裏に潜んでいることを知りました。 ※デバイスに各作品世界の情報が送られています。 ◆―― 選択の時、来たれり。 ――◆ 願いは決まったかね。 そう告げられたタスクの心境を察せれる存在など広川しかいないだろう。 彼は優勝者の背後に立っており、補助をするように声を上げた。 「別室で話していましてね、どうも我々に願いをかなえられるのは不服だと申している」 「お前達に叶えられる願いなんて、こっちからお断りだ。そんなことはアンジュも……誰も望んじゃいない」 彼らの言葉を借りれば『聖なる器を奇跡で満たしたが故に、願いが叶う』 大切な人を取り戻そうと、主催者達の息が掛かった願いなど、誰が望むのか。 人生を弄び、その最後まで茶番に巻き込もうとするならば、その所業、許してなるものか。 「人間とは愚かな生き物だ。目の前に叡智があるというのに何故、拒む?」 「愚かな生き物だからですよ。人間は醜い己を偽り、こんな時でも綺麗事で自分の意思とやらを優先する」 ――お前はどっちの味方なんだ……。 広川の言葉はその場凌ぎの虚偽にしては重みが感じられ、まるで本心からの発言に聞こえる。 話術に長ける人間ならではの演技だろうか。彼からは表と裏の境界線が感じられずにいた。 場の支配権を彼に委ねたタスクであるが、相手であるお父様から微塵も生気を感じない。 しかし、何処か感情を漂わせており、彼の真意も計り知れずにいた。 「ならばお前はこのまま……何も願いを叶えずに元の世界へ還ることでいいのか」 「お前達が還してくれるなら……そうするね。俺は元の世界へ戻れるのか?」 話には裏が存在する。 大勢の人間を集め殺戮の宴を開催した彼らに常識が通用するとは最初から思っていない。 首輪の解除や偽装の優勝を含め、彼らを全て信用すれば、死ぬのは己である。 最悪の場合は戦闘も発生しよう。懐の刀に手を伸ばし――。 ――アヌビス神は時計塔に置き去りのままか。 相棒とも呼べる刀身が手元にあらず。 他に武器を持ち合わせてはいるが、彼の中で勝率が大幅に減ってしまう。 されど、心境を悟られるな。足元は最初から見られている。ならばせめて底は見せるな。 「可能だ……お前達は知っていると思うがあの会場にはロックというつまらぬ枷が存在している」 「ロックを解除すれば色々と解放されるのだが……その一つに扉の先の選択肢が広がる仕組みになっている」 「……扉の先の、選択肢……それが皆の世界ってことか」 数刻前に意識を取り戻した時を気付かなかったが、お父様が居座る玉座の奥には巨大な扉が置かれていた。 彼らの言葉を処理し、必要な情報を連結するにこの扉を通れば元の世界へ帰還出来るのだろう。 不思議とは思わない。平行世界の移動を個人単位で成功させる調律者を知っている。 寧ろ、扉の存在が可能性を大いに引き上げているようにも感じていた。 「でも最後のロックを解除する前に俺は優勝した。だから――」 「それは私がサービスで解除しておいた……自分達の力で解除出来なかったが、仕方あるまい。 遅かれ早かれお前達は足立透と交戦していた。黒が駆け付ける可能性もあったが、後に御坂美琴も合流しただろう。 最悪の場合はエンブリヲすら敵に周りロックの解除どころの話では無くなるからな……お前達の位置関係は皮肉にも無理だった」 仮にタスク達が時計塔に寄っていなければ。 佐倉杏子は足立透に殺されていただろう。エンブリヲが本田未央を見捨てていなければ、鉢合わせする可能性もあっただろう。 学院での戦闘後に御坂美琴が西へ来ていたら。彼らの生命は塵のように消えていただろう。 「感謝の言葉は必要ない。求めていないからな」 「ならそうさせてもらうよ……誰が言うものか」 共同戦線の運命共同体。 内通者と参加者の賭けであるが、礼を述べる間柄などであるものか。 主催者がいなければそもそも殺し合いは始まっていない。 「つまらんな……まぁ、いい。 還るならばそこの機体に乗り込んで還りたまえ。もうこちらからの興味は失せた」 「機体……っ!?」 お父様の指がトンと台座を突いた時。 タスクの左方に召喚されたのだ。何も存在せずに無だった空間。 物体すら感じられぬただの空間に構成されるは見慣れた機体だった。 その光景に驚きを感じながらも近付くタスクだが、目を疑った。 見慣れた機体は彼がよく知る存在と同一であり、紛い物と呼べない正真正銘の彼の機体。 粒子のように構成されその姿が完全に顕現された時、帰還の手段が整ったと言える。 「これは俺の――隠し持っていたのか?」 「何を言うんだ。支給品の段階で気付くべきだろう」 「広川……それもそうか」 小型の飛空艇。 タスクからすれば相棒であり、アンジュとも一緒に跨った愛機が主を迎えに馳せ参じた。 コックピットブロックをこじ開け、内部を確認。 各種メーター良好、エネルギーも問題なし、センサーも正常に作動していた。 ――本当に、帰れるのか……。 座先に跨がり、各機関を作動させる。 静まり返った空間にエンジン音が何処までも響き渡る。 ――反響具合からして……とてつもなく広いのか? 空間の奥行きを感じながら、レバーを握るが若干だが機体が上がる。 手入れもタスクの知っている機体と同じであり、今すぐでも飛び出せる段階だった。 ――時間稼ぎはこれ以上無理……か? 実際に稼げたのは一時間程度だけど……皆は大丈夫だろうか。 このまま合流したいところだけど、これからどうするべきか。このまま俺だけが還るなんて有り得ない。 雪乃が、杏子が、皆が……まだ、戦っているんだ。俺だけ悠々と生き延びるなんて――――――――――――なっ。 「そのままこの空間から消えれば首輪が爆発しお前は死ぬ。 最後の人間がそんなことで死ぬとは興醒め以下……これは当然の結果だよ」 モニターに表示される文字列と解除された首輪。 広川の干渉だろう。己の選択に悩むタスクの意思と反し、彼の首輪が解除され機体から転がり落ち、床に落下した。 金属音が響く中、モニターには広川の新たなる言葉が表示されていた。 「扉の行く先はお前が念じた空間に繋がる仕組みになっている。 故に元の世界以外にも繋がっている――つまり、会場にも繋がっている」 ――そうか。 「広川、聞こえているんだろう?」 「あぁ。安心しろ、エンジン音に消されお父様には届いていない」 レバーを握り、ペダルに足を掛け、たった一言を告げる。 「礼は言わない。全てを終わらせた後に、また会おう」 その言葉を最後に機体が上昇すると、奥の扉が解放された。 そしてペダルを踏み込み機体を徐々に加速させ――制空の騎士はその空間から姿を消した。 「これで裏切り者が判明したな――――――――――――――広川」 ◆―― 今宵の勝負、軍配は黒にあり。 ――◆ 重力とは別の圧力が機体とパイロットに襲い掛かる。 眼前に広がるは電子空間のように滲む世界の壁。世界の内側から外側を覗いているような感覚だった。 「待っていてくれ……雪乃、杏子、皆……!」 想いの力が彼を導く天の煌めきとなる。 自由を束縛されようが、正義を抑制されようが、運命に囚われようが。 この想いだけは誰にも止められてなるものか。 自分のやるべきことは決まっている。それを成し遂げるためにも――想いを絶やすな。 彼の周りからは多くの仲間が消え、最後に残るは最悪の結果であるエンブリヲのみとなってしまった。 このまま自分だけが帰還したとしても、調律者はどんな手段を使ってでも再び現れるだろう。 「もう誰も失わないために――俺はッ!」 魂の叫びに呼応し機体が加速し始め、やがて彼女達の鼓動を肌で感じることとなる。 遠くに僅かながらに見えるは雪ノ下雪乃と佐倉杏子――おまけの足立透の姿。 想いに導かれタスクは着実に会場へと近付いており、到着は最早、秒読みの段階だった。 エドワード・エルリックはまだ到着していない。 しかし優勝者がこうして元の世界へ戻ろうとしているのだ。 お父様のマークも外されることだろう。時間稼ぎの役目は果たした――後は錬金術師の仕事である。 仮に会場に主催の介入が発生した場合には首輪を外した自分が盾となる。 この身で救える生命があるならば、最後の最後まで仲間を護る騎士となろう。 もう誰も死なせるものか。己でも諄いと感じる程の決意を胸に――帰還するは会場。 「……………………………………機体の制御が、きかな、い……ッ!?」 急停止による重力が身体に襲い掛かり、衝撃によって吐血するも意識を失ってはいられない。 振り返ると見たことも無い光景が広がっており、それでも状況を把握するには充分すぎる情報だった。 無数の黒き腕が機体を奈落の底へ引き摺り下ろそうとしているのだ。 群がる黒き腕は亡者の如く、呼吸の時間すら於かぬまま機体の半分を占領。 満足すること無く腕は操縦者たるタスク目掛け進軍を始め、彼の元まで到達するに時間は必要ない。 最初は左腕。強引にレバーから引き剥がされるとガラ空きになった上体へ影のように群がる。 やがて上半身を覆い潰すと、ペダルから足が離れ機体のコントロールを失うも、機体自体が影に潰される。 最後の仕上げにタスクの首を締め上げるように巻き付き始め、彼の抵抗も虚しく、正体不明の黒き腕が機体を制圧してしまった。 「今の気分はどうかね」 「ほ、ほむん……くる、す……!」 空間に直接語り掛けるように響いたその声は聞き覚えがあった。 忘れる筈が無い。たった数分前に聞いた此度の黒幕――フラスコの中の小人。 彼の声が響いた時、黒き腕の正体も彼の息が掛かった存在、或いは能力なのだろう。 以外にもタスクの思考がハッキリしていた。 こんな状況であろうと、頭が回転しており状況を簡単に飲み込んでしまう。 結果が弾き出す答えなど認めなくても一つのみ。最早、最初から決められていたのだ。 「………………ぁ、だ……」 締め上げられた喉元に阻まれ声が届かず。 けれど、折れぬものか。この世は諦めた者から朽ち果てる。 最後の最後、その刹那まで彼は抗い続ける。 「いつから……気付いていた」 用意周到。タスクの進軍を阻む黒き腕の登場は出来過ぎている。 お父様は――欺きに気付いていた。答えは一つしか無い。 ならば、いつから見抜かれていたのか。己の生命は砕け散ったとしても、仲間はまだ生きている。 彼らにも災厄が襲い掛かる可能性があるのだ。 そうなれば意地でも会場に辿り着き、彼らを救うために。 この身、最後まで戦い続ける――のだが、お父様はどの瞬間から見抜いていたのか。 「何を言っている。最初からだ……お前と広川が接触を始めた時点で気付いている」 「そ、んな……じゃあ、俺た、ちは……最初から全部……お前の思惑ど、おりに……っ、く、そ……」 黒き腕が彼の視界すら覆い被さり、文字どおりの影でしか彼を認識することが出来ない。 包まれた素顔には後悔の念が浮かんでおり、唇を噛み締め、己の不甲斐なさを嘆いている。 元より最初から博打だった。この賭けを行わなければ今でも殺し合いを強要されていた。 淡い希望を無理に肥大化させ信じていた。それは甘んじて認めよう。 けれど、それでも絶望に塗り潰される現実が彼を苦しめる。 この計画が失敗すれば――全ての参加者が死ぬ。あのエンブリヲですら生命を落とす。 「薄々は気付いていただろうが泳がせたのだよ。裏切り者を炙り出すために」 「な……に?」 「私の計画にとって邪魔な存在が居ることは気付いていた。まさかこうも簡単に尻尾を出すとは……人間とは愚かな生き物だ」 嵌められたのは参加者。そして――広川。 全ては最初からホムンクルスの掌の上。予定調和とは彼のための言葉であった。 賭け事を行うにも全ては遊技盤の主が支配していた。勝利を導き出せど、それは罠である。 「広川も、俺た、ちも……お前に負けて、たまるかよ……ッ」 強がりの言葉を吐き捨てると同時に、最後の力を振り絞ったタスクは右足をペダルへ叩き付ける。 機体が急加速し黒き腕の拘束がある中で、その呪縛から逃れようと前へ進み始める。 このまま終わってなるものか。最後までお前の思惑通りに進めてなるものか。 ――行き先はお前の居場所だ……機体ごとぶつければ……っ 徐々に機体の速度が呪縛を上回り始める。 タスクが想う先は先程の空間であり、最後の足掻きである。 ホムンクルスであろうと機体の質量を高速で衝突させれば、発生するエネルギーで圧し潰せる。 ――想いだけでも、この想いだけでもお前に 生命を燃やす時とは正にこの瞬間を指すのだろう。 機体の行き先に表示されるはつまらぬ表情を浮かべ、玉座に居座るホムンクルス。 真理の扉が彼の居場所を制定し、全ては整った。タスクにとって、最後の賭けが此処で決まる。 「っ――うぉぉおおおおおおおおおおおおお!!」 明日へと託す最後の咆哮と共に、機体の速度が黒き腕を振り払う。 呪縛を失った機体は誰にも止められること無く、ただ倒すべき対象に向かい、進むだけ。 タスクの身体は足立透との戦いで限界を迎えている。 事前のキング・ブラッドレイとの交戦にて一度は死の境地へ片足を踏み込んだ。 雪ノ下雪乃と佐倉杏子、そしてアカメに救われたその生命だが、最早此処まで。 ならば救われたこの生命。 最後は彼女達のために――未来へのために。 「一つ勘違いをしているな。 広川は私の味方……最初から騙されていたのはお前達だけだ」 そして真理の扉は閉ざされた。 彼の表情を知る者は誰一人として、いない。 お父様であれど、広川であれど、その最後を見届けた存在は非ず。 それでも機体は加速を続け――行く先は閉ざされた扉。 回避不可能な衝突が発生し、空間には機体の爆発が響き渡る。 その瞬間に。 絶望の宇宙に吹き荒れる嵐が全てを満たした時。 滅び行く世界の中で、明日を求めた一人の男の無念が、微かに響いていた。 【タスク@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 消失】 無能、強打、虚無、杜撰 どれ一つとっても戦場では命取りとなる それらをまとめて無謀で括る 仕組まれた作戦、仕組まれた地獄 行きも怖いが帰りも怖い 言うなれば運命共同体 互いに頼り、互いに庇いあい、互いに助けあう 一蓮托生、既に血肉は分け合った 捻れて繋がる二重螺旋のように 精妙にして巧緻、大胆にして細心 この作戦が成功する時、共に歓喜の祝杯を轟かせよう 嘘を言うな 差異に歪んだ暗い瞳がせせら笑う 何を勘違いするか 全ては最初から掌の上で踊り狂っていただけ お前も お前も お前も 所詮は予定調和内の叛逆だ 時系列順で読む Back 第五回放送 Next ラストゲーム 投下順で読む Back 第五回放送 Next ラストゲーム
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〆(参)◆tu4bghlMIw 「ふぅん、ここで切るわけ」 「……続きはwikiで、なの」 「まぁこの先はちょっと表現し難いものね」 「それもあるけど……実はこの番組は一読さんが『本編を読みたくなってしまう』ような総集編を目指しているの」 「……にしては、ここまでボカしたのは初めてよね」 「様々な事情から、大幅に手を加え易いパートとそうでないパートがあるの」 「ああ、そっか。なるほどね」 アンソロ本を巡る騒動も過ぎ去り、杏とことみは和やかに言葉を交わす。 番組もついにCパートへと突入し、本筋に入らざるを得ない状況である。 「……ごほんっ! さて、こんな事を言っている間に……いつの間にかあたし達、ワープしてしまったみたいなんだけど」 「ワープというか……スタジオを移動しただ――ゴホッゴホッ!」 極めて不自然な言葉と共に、杏はキョロキョロと周囲に視線を散らした。 もちろん、テレビの前のお友達も突如二人の居る場所が変わってしまった事にお気付きのはずだ。 そしてそれ以上に画面における最大の変化が一つ。 つまり、二人の格好が赤ブルマ&光坂高校指定体操服という極めて健全な衣装ではなくなっている事である。 彼女達が見に纏っているのは学生のフォーマルウェアとも言うべき、学校の制服だった。 それもクリーム色の生地が特徴的な冬服ではなく、群青色のラインが特徴的な夏用のセーラー服だ。 「この服、まさにアニロワならではよねっ!」 「ゲームでは……わたしたちに夏服はないの……。京○ニに……感謝するの」 アニメ、という部分を妙に強調する二人。 大増量された赤ブルマもだが、ことみと杏の二人が光坂高校の夏服を着ている時点でそれはアニメ出典確定なのである。 が、視聴者の皆様はやはり既に『いくつかの不可解な点』にお気付きだろう。 光坂高校の夏服は白と深い青色をベースにしたオーソドックスなセーラー服だ。 スカートの丈がデザイン的に若干長めである事を除けば、別段不思議な点などないのだ。 では、何故――彼女達の服は不可思議な『メロンジュース色』に照らされているのだろうか? 「ふふふ、この色……もう鋭い人は気付いちゃってるでしょうね」 「この色は……普通……気付くの」 メロン、メロン、メロン……。 アニロワ2ndにおける「メロン」といえば勿論、参加者の一人V様ことビクトリームの大好物だ。 彼が登場話にてカミナと見せた抜群のコンビネーションはまさにアニロワ2ndの幕開けだった。 カミナに関して言えば、もしかしたらコレが一番目立っていた時期なのではないかともっぱらの噂である。 しかし、アニロワ2ndのwikiを「メロンジュース」で検索して貰えればとある状況において、この描写が用いられた事が分かるはずだ。 「それじゃあ、まだ分からない人のためにクイズを出しましょうか」 夏服のスカートが颯爽と舞う。 体操服から着替えられた事がよほど嬉しかったのだろう。 心なしか杏の表情も先ほどよりもウキウキとしているように見える。 「ある時はメロンジュース、またある時はストロベリージュース……これなーんだ?」 チッ、チッ、チッ、チッ、チッ、チッ、とカウントを取る音がサウンドエフェクトとして流れる。 そしてたっぷり十秒後。得意げな顔付きの杏がゆっくりと唇を開いた。 「答えは――――」 「……スイッチ・オン、なの」 豪快な動作と共に、メロン色だった空間へ眩い光が降り注いだ。 一瞬ホワイトアウトするテレビカメラ。 太陽の如き輝きに思わず眼を閉じた視聴者の視界に映った光景とは―― 「クイズの答えはズバリ――シズマァァアアッッッドライィィィイブ!」 「もしくは…………梅サワー?」 「お色直しも済んだし、アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 総集片第二部 in 大怪球フォーグラー! 始まるわよっ!」 アニロワ2ndのリーサルウェポン――大怪球フォーグラー。 この放送用に改造された大怪球フォーグラー(の多元宇宙的存在)特設スタジオに二人は移動していた。 本来ならばフォーグラーの内部は鮮やかな緑色の光で満たされているのだが、今回に限っては普通の蛍光灯が天井に嵌め込まれていた。 暗くて、時々赤色に光り、基本は蛍光緑色の空間でテレビの放送など出来る訳がないからだ。 スタジオの丁度中央にはもう御馴染みになった大画面。 そして、その目前に『フォーグラーらしさ』を追求するために台座が用意されていた。 そこには緑色の液体と赤いチェリー状の球体が浮かんでいる。 まさしく、アンチ・シズマ管のレプリカである。 現在、会場内の参加者達はコレを揃えるべく奮闘しているというのに、総集編ではいとも容易く収納してしまっていて申し訳なささえ感じるくらいだ。 加えて、ご丁寧に三本ある内の一本には油性マジックで『アルベルト』と名前が書いてあった。 「場所と服装が変わって心機一転ね」 「アニロワ2ndを語るのに……フォーグラー抜きはちょっとないの……それにしても、」 突如キョロキョロとことみが忙しなく視線を散らした。 「……どうしたのよ」 「こう、凄いロボットに乗っていると……色々言いたい台詞が思い浮かぶの」 「例えば?」 「『このロリコンどもめ!!』とか」 「いや、元ネタ的には間違ってはいないんだけどさ……」 「それじゃあ……『杏ちゃん! あれを使うの!』とか」 「『ええ、よくってよ』なんて答えてあげたいけど、フォーグラーじゃ無理。足がないから立てないもの」 「…………ガイナ立ちは本編に任せるの」 非常に口惜しげにことみが呟いた。 彼女は『キック』に意識を取られているため気付いていないのだが『ビーム』ならば、このフォーグラーでも発射出来るのだ。 だがそんな事を忠言してしまうと、辺り一面が重力レンズ砲で崩壊してしまう。触らぬが華、だ。 「さてと、」 そして台座の手前に置かれていたのが二組のフカフカのソファと飲み物とお茶請けが用意されたテーブルだった。 二人はゆっくりとそちらに向けて歩を進める。 「ゲスト呼ぶ?」 「まだちょっと……早いの……」 「じゃあ先にVTRかしら」 「なの。まずはフォーグラー誕生の秘話に迫るの」 バフッと杏がソファに勢いよくお尻から飛び込んだ。 ことみもそれに追従してゆっくりとした動作でその隣に腰掛ける。 そして、二人そろってのカメラ目線。笑顔。ニッコリと。VTRスタート。 【大怪球フォーグラー誕生列伝】 239話『W.O.D ~Wisemen On Discipline~/~World Of Darkness~/~Write Or Die~』 245話『月下の棋士/【ZOC】絶望の器/まきしまむはーと』 249話『てのひらのたいよう/明智健悟の耽美なるバトルロワイアル――閉幕』 ――――――――――――――――再生開始―――――――――――――――――――― ――〝コレ〟は……何だ? ▽ナレーション▽ 【暗澹なる澱から覗きし、ざわめくような光。 螺旋の輝きに似たキラメキの中で、女は自分の身体に得体の知れない感覚が生まれるのを感じた】 「……〝コレ〟……は、動くのか?」 世界制覇を目指すBF団が暗躍し、エマニエル・F・Fが10年の歳月と、無数の人員、大量の予算ををかけて製造したコレは。 BF団の最終悲願を達成するための露払いとして製造されたこの超巨大兵器の名前は――……、 ――大怪球 フランケン・フォン・フォーグラー。 形状は完全な球体で、直径は丁度300メートル。重量は500万トン超。超巨大――ロボット、である。 ▽ナレーション▽ 【賢き少年は苦悩する。そして驚愕する。 想像する。想起する――世界に〝静〟をもたらす巨大なる〝動〟の鼓動を】 ――全部全部終わっちゃえばいいよ。 その黒金の魔物の導線に火を灯したのは、争いとは最も程遠い少女の小さな手。 ▽ナレーション▽ 【そして彼女のおそれはつのる――】 瞬間、世界がもう一度赤く染まる。 再度のレッドアウト。部屋中の緑色が一斉にその彩を変化させて行く。 そう。 右を見ても、 左を見ても、 上を見ても、 そして、前を見ても、 全部全部全部全部……血のような、炎のような、黄昏のような――――紅。 ▽ナレーション▽ 【厄禍なる坩堝は自身への絶望と失望で満ちた。 夜が明ける。漆黒の世界を照らす輝きは更なる――黒き光】 光のない笑みと共に、頬を紅潮させた少女があどけない表情で嗤う。 世界なんていらない。 励ましも、感情も、思いやりも全部、全部だ。 二人の隙間を埋めるのは無機質な鉄と冷たい空気だけ。 終わりを求める少女の心は、いつの間にか空っぽになっていた。 残ったのは泥のように汚い醜悪な感情だけ。 自己の崩壊。他者への強烈な依存。そして羨望。 その結果生じる、状況認識力の低下。 自ずと湧き上がる破滅的思考。 非力な自己に対する憎悪。 徹底的な自身への蔑み。 思考力の著しい低下。 倫理観の歪み。 常識の欠落。 進化の終焉。 自己完結。 段階滅破。 終末願望。 無気力。 疲労。 発熱。 紅。 死。 何もかもが幻のようだった。 それは、世界が終焉を迎える寸前の出来事だ。 とある世界のとある男のように――少女は、世界に絶望を求める。 そして――――"黒き太陽"が動き出す。 ――――――――――――――――再生終了―――――――――――――――――――― 【参加者インタビュー⑥】 ●明智健悟(警視庁刑事部捜査一課警視・二十八歳) ――今日はよろしくお願いします。 わざわざこんな場所まで、申し訳ありません。 それにしても少々お疲れのご様子ですね。どうぞ、私の淹れた紅茶です。喉がお乾きでしょう? ――あ、すいません。それでは遠慮なく……。 いえ、こちらこそお口に合うと嬉しいなのですが。 ――え、わ……これ! す、すっごく美味しいです! そう言って頂けるとこちらも幸せな気分になります。お代わり、なされますか? ――あ、えと、どうしようかな……。んーと、じゃあもう一杯だけ……。 はい、どうぞ。まだまだ沢山ありますからね。藤林さん、お茶請けのお菓子もいかがですか? 士郎君とミー君が用意してくださったクッキーやスコーンがいくつも残っているんですよ。 ――あたし、もっと早く明智さんの所に来たかったです……。 おや、もしやお悩みでも? 私でよろしければ出来る限りの相談に乗らせて頂きますよ。 実はこう見えてもロスで心理セラピストの研修を受けた経験がありまして。 ――あぁ……、はいっ。えーと……ちょっとぐらいならいいよね……。あの、ですね! 実はその…………。 ふむ、なるほど……隣のクラスの卒業出来るかどうか心配だ、と。 この前は語尾に『便座カバー』をずっと付けていた……と。確かにコレは藤林さんが気に病む気持ちも分かりますね。 そして、もう一人の方……岡崎さん、ですか。彼がどうされましたか――? (この後、数十分以上に及ぶインタビュアーと明智の悩み相談が始まる。 恋愛、家庭事情、友人関係、進路……彼女はいくら普段気が強いからといえ多感な高校三年生に過ぎない。 当然、心配事は山のようにあるのだ) ――ありがとうございましたっ! あたし、何ていうか……その、スーッとしたっていうか……胸のつかえが取れた感じです! いえいえ。こちらこそ、お役に立ててなによりです。 ところで……テレビ番組のインタビューの方は大丈夫なのですか? ――………………すいません。えーと、その、もう少しお時間大丈夫ですか……。 ふふ、構いませんよ。 さてと、何から話したものでしょうね。 ――やはり各種名簿とレーダーの話をお伺いしたいです。 一言で表現するなら、禁断の道具ですね。 ただ、これを神の悪戯と呼ぶか、もしくは運命の邂逅と呼ぶかは人それぞれでしょう。 皮肉な巡り合いの末、それだけの力を持った支給品が揃ってしまった、という事です。 ですが、逆に大き過ぎる力は人に災禍を振り撒きます。 藤林さんも考えてみて見てください。 高嶺君は「レーダーを持っていたから」こそ、ゆたかさんを置いて私の元へ危機を報せにやって来ました。 私が同じ状況に直面していたとしても同様の行動を取ったでしょうね。 しかし――逆に、我々の手にレーダーがなかったとしたらどうでしょう? この場合、フォーグラーが暴走する、という結末は避けられたのではないでしょうか。 神の見えざる手に近しいそのような機能は、我々人の子には過ぎたる力だったのかもしれません。 出来るだけ多くの情報を持つ事が最良とは限らない。 人には人の、神には神の歩みが存在するのですから。 ――残念ながら、明智さんはゆたかさんの暴走を止める事が出来ませんでした。 あれは全面的に私の責任です。 ですが、ゆたかさんに無理な指示をした、という訳ではないと思っています。 我々がしてしまった致命的な過ちは彼女に「重荷を背負わせた」事です。 一方的に守られる事がどれだけ彼女に負担を掛けていたのか、これっぽっちも把握していなかった。 ですがね。お恥ずかしい話になりますが、今も私は信じているんですよ。 ゆたかさんには素晴らしい可能性が眠っている、とね。 彼女には本来、無限の未来が広がっているはずなんです。 あの時の私の失敗は、事態を急ぎ過ぎてしまった事です。 成員の心理状況の把握、不満と役割の調整。 どちらもリーダーとして決して疎かにしてはならないミスです。 それに……彼女に大して、もっと別の接し方があった。悔やんでも悔やみ切れません。 ――菫川ねねね、スカー。この両名へのメッセージをお願いしたいのですが……。 菫川先生。 大人としての役割を全て押し付けてしまった事、きっと怒ってらっしゃるでしょうね。 私としてはあなたが許してくれるのならば、喜んで謝罪に赴きたいのですが……死人としての身体ではそれも難しく。 あなたの書いた、あなただけの本当の物語。 クライマックスはこれからです。期待していますよ。見せて頂けるのでしょう? 最高のハッピーエンドと大団円を。 スカー氏。我々が共有した時間は極めて短い。 私はあなたについての情報こそ持っていますが「あなたという人」については限りなく無知です。 ですが、私達はあの瞬間、確かに一本の線で繋がった――仲間です。 導いてあげて下さい。行く先の見えない未来に立ち止まる子供達を。 示してあげて下さい。その〝破壊の右腕〟で切り裂く本当の未来を。 ――ありがとうございました。 いえ、こちらも素晴らしい経験が出来ました。有意義な時間でしたね。 ▽ 「杏ちゃん……職務放棄にも程があるの……」 「え、あ、あははははは……」 「でも明智さんは凄いの。ロスは偉大なの」 「まぁロスだしね」 「あ……それと……ロスも凄いけれど……眼鏡も凄いの」 「眼鏡?」 杏の頭上にクエスチョンマークが飛び出した。 眼鏡。確かに明智は眼鏡の似合うナイスガイではあるが……。 「今時、眼鏡があれだけ似合う人はいないの」 「確かに。今は、アンチ眼鏡が蔓延る時代だし」 「むしろ……智代ちゃんみたいな隠れメガネじゃないとダメなの……」 「純粋なメガネっ子……確かに言われて見るとパッとは思いつかないわね」 「いるの。眼鏡のせいで四人組の中でいつも一人省られたりするの……眼鏡はバッドステータス……回避不能の死亡フラグ……」 「あはははははははっ! ことみ、ちょっと言い過ぎっ!」 大きなお世話、としか言いようがない会話で盛り上がることみと杏。 全世界の眼鏡ヒロイン各位に喧嘩を売っている。 が、すぐに眼鏡トークに飽きた二人は行儀よくカメラに向き直ると、 「さて、ここまで楽しく過去の話を振り返って来た訳だけど……」 「そろそろ一度、現状の整理をする時間なの」 二人の台詞と共に、カメラの端、スタジオの奥からガラゴロと縦回転式のメッセージボードが運ばれて来た。 大きさは身長の低いことみが目一杯背伸びをして丁度一番上まで届く程度。 無言で、くるりとソレの掲示板の部分をことみはひっくり返す。 「じゃあ、まず本編と直接リンクする282話『愛に時間を』終了時点でのお浚いをしてみましょうか」 どこから取り出したのか、指揮棒のような物を杏がボードに当てた。 そこには現在の生き残りに関する相関図が記載されている。 「まずは便宜上……《グレンラガンチーム》とするの。 ここに属しているのは【ヴィラル】【シャマル】【クロスミラージュ】の三名。 夫妻の愛の巣に囚われのヒロイン的拳銃型デバイスという構図」 大きく丸で囲まれた三つの名前。 ヴィラルとシャマルの間の矢印付近には『LOVE天元突破!』『君を乗せて』『俺はシャマルと添い遂げる』といった小恥ずかしい文字が書き込まれている。 「まぁVTRをもう一度見てみるの」 282話『愛に時間を』 ――――――――――――――――再生開始―――――――――――――――――――― 「――オレのドリルがァアアアアア!!」 ドリルと化したラガンの内部より、ヴィラルの叫び声が響く。 それは外にも漏れ、ドリルの回転音にも負けず、皆の耳に届いた。 空中で停止していたラガンが、回転を強めながら降下する。 「――シャマルを貫きィイイイイイ!!」 まっすぐ、直下のグレンへと突き刺さる。 グレンの頭頂部を穿ち、貫通して、一心同体となる。 「――合体するッ!!」 異なるガンメンにドリルで接続し、その機体のコントロールシステムを掌握する。 ラガンにのみ搭載された特殊機能によって、今、グレンとラガンが一つになった。 ドリルはグレンの頭頂部を通して、シャマルが席を置くコクピットまで届く。 両機体の操縦席がドリルで繋がり、またそのドリルを管として、ヴィラルは螺旋力を流し込んだ。 グレンの全機械系等に、そしてシャマル自身に。 黒こげだったグレンの全姿は、注がれた螺旋力を洗浄剤として、一瞬の内に赤を取り戻した。 装甲の損傷すら掻き消し、まった新しい姿へと生まれ変わる。 力と力が合わさる様。 機械と機械が見せる芸術。 愛と愛の結晶。 広大なる多元宇宙の果て、男と女はロマンに乗せて、こう叫ぶ。 「「 愛 情 合 体 ッ ! 天元突破グレンラガン!! 」」 ……ヴィラルとシャマルの掛け声が重なり、会場全域に轟いた。 ラガンは頭部として、グレンの首に収まっている。 グレン背部に収納されていた飾兜が、ラガンに被さった。 顔面兵器などではない、真っ当な人型を成す合体メカは、巨人として聳え立つ。 ――――――――――――――――再生終了―――――――――――――――――――― 「…………うわぁ」 「…………卑猥」 「こ、ここまでやられると、むしろ清々しいわよね」 「気合があれば本当に何でも出来てしまうのが螺旋力なの」 この合体を見せ付けられた他の参加者同様、二人も微妙に頬を赤くした。 正直、子供には絶対見せたくない展開である。非常に教育的によろしくない。 「そして、天元突破しちゃったと……」 「『男の人と、女の人が、愛し合って、合体する』のがアニロワ2ndのクライマックスだったの」 「BL合戦といい、コレといい……とんでもないロワだわ」 杏がパタパタと手団扇で体温の上がった顔に風を送る。 公共の電波を使って、何をやっているのだろうという疑問が湧き上がって来るようだった。 「そして、このグレンラガンが主人公チームと相対している、と」 「……そうなの。ただ、グレンラガンチームにはクロスミラージュが囚われているのだけど……」 「なんか、歯切れが悪いわね」 「そりゃあカミナさんがあの有様じゃあ、言い淀みもするの……」 クロスミラージュ。 本来ならばティアナ・ランスターの使用するデバイスに過ぎない彼/彼女だが、アニロワ2ndでは事情が異なる。 先のマスターのインタビュー内容からも分かるように、もはや参加者の一人と言っても過言ではない活躍を見せている。 確かに、カミナの相手といえば口付けを交わした仲であるドモン・カッシュが有名かもしれない。 しかし彼らが一緒に行動した時間は短く、逆にクロスミラージュとカミナの絆は非常に深い。 「むぅ、何よ。じゃあ肝心のカミナはどうなってる訳?」 「ギルガメッシュさんにフルボッコにされたの」 「………………」 「もう完膚なきまでに」 「………………」 「手も足も出ずに」 画面が切り替わり『愛に時間を』におけるギルガメッシュとカミナのバトルシーンが映し出された。 叫びながら殴り掛かるカミナ。完全に舐め切った口調であしらうギルガメッシュ。 両者の間には天と地ほどに深い実力の差があった。 「まぁフォローするとして……いくら何でもカミナさんがこのまま何もせずに終わる……という事はないと思うの」 「何か、予想外の活躍を見せる、と?」 「そうなの。もし……このまま何もしなかったら『アニロワ2ndのドラえもん』という称号をプレゼント」 「…………もうそうなる可能性にチェックが掛かってる気が」 「そうなった時は……わたしと読者一同の腹いせとしてエピローグ中に眼でピーナッツを噛んで貰うとするの」 ▽ 【参加者インタビュー⑦】 ●衛宮士郎(第五次聖杯戦争勝者・魔術師/十八歳) ――いきなりですが、凄く失礼な事をお聞きしてもよろしいでしょうか。 な、何だ……随分唐突だな。 とりあえず聞いてみない事には何とも言えないけど。 ――はい、では。アニロワ2ndの士郎さんは『シスコン』&『ロリコン』という扱いで宜しいでしょうか。 なっ……!? ちょ、ちょっと待ってくれよ! 何でそんな扱いになるんだ!? ――だって『イリヤの味方』なんですよね? うっ……そ、それを言われると…………まいったな。 いや、まぁ。そりゃあイリヤとは仲良くやってるけど、それがそういう……その、何だ。 そ、そういう言葉で括れるかどうか、って訊かれれば難しいし。 あ、ちょ、な、何だよその眼は!? まるで犯罪者を見るような……。ニ、ニヤニヤしないでくれよ……。 ――それでは、本題に入りましょう。 バッカーノ、怪獣大決戦を引き起こした原因は士郎さんの不用意な行動にあるという説が一般的ですが。 それは、まぁ認めるよ。 俺が鍋を作ろうとしたのが東方不敗を映画館に呼び込むきっかけになった訳だし。 しかも人質にされて……申し訳なくて、明智さん達に合わせる顔がなかったよ。 ――ゲーム開始直後、実は南方の学校で間桐慎也さんが士郎さんの訪問を待っていたのですが。 ……………………そ、それは初耳だったな。 でもさ、ああ見えても、あいつ結構良い所あるんだ。 あんまり悪く言わないでやってくれよ。 …………は、お、女の子に襲い掛かった? 『お前、服を脱げよ。そしたら信用してやる』という最低な台詞を残した……だって!? いや、そんな。嘘だろ? ……嘘じゃ、ない? ………………えーと。 ――こちらとしてはドモンさん、東方不敗さんに対するメッセージを士郎さんには頂きたいです。 ドモン……ああ、俺を鍛えてくれた男の事か。 それほど長い付き合いじゃあなかったけど、アイツの実力は本物だと思うよ。 少なくとも、正面からならギルガメッシュにだって引けは取らないんじゃないかな。 でも俺の知る限りじゃあ、まだまだ全力を出す機会には恵まれてないな。 多分、あの力が生き残った人達……ねねね先生とか……ギルガメッシュを助ける場合もあると思う。 東方不敗は……そうだな、確か『上』の連中側に付いたんだっけ。 だとしたら、正直――最強の敵、じゃないかな。 会場に降りて来るのに生身って事もないだろうし、この爺さんをどうにかしない限り活路はない筈さ。 対抗出来る奴がいるとすれば…………まぁ、分かるだろ? ――本日はありがとうございました。お姉さんとは仲良くしてあげて下さいね。 …………なんか引っ掛かる言い方だな。 言われなくてもそうするよ。今日だってこの後、イリヤと一緒に買い物に行く約束を―― ▽ 「この後アイツ、イリヤちゃんと手を繋いでどっかに行っちゃたのよねぇ」 「まったく。姉に手を出すなんて……とんでもない奴。…………嘆かわしい限りなの」 「でも、この世の中には妹や姉にはとりあえず手を出さないと逆にヘタレ扱いされる世界もあるらしいけど」 「普通、姉妹とはそういう事しないの」 「ごもっともで」 これまた今日何度目か分からない両者の息の合ったため息。 全くもって気苦労の耐えない番組である。 「それでも、士郎に関しては立派な最期だったって意見も多いわよ」 「まぁ実際、死後に好き勝手出来るのは…………生前の良い行いのおかげなの。……某ワカメとは比べられないの」 「アレは女の敵よね」 「そりゃあラーメンのダシ骨と一緒に埋められても仕方ないの」 二人は顔を見合わせ、やれやれとジェスチャーで示した。 が、すぐに気を取り直し番組を再開する。 次にことみが指示棒で指し示したのは大きく『VS』と書かれた先にある集団だった。 「さて、前話は『愛に時間を』のラストでギガラヴドリルブレイクを夫妻チームがぶち咬ました所で『引き』なの」 「……ということは、」 「そう……おそらく最終回の冒頭は主人公チームがこの一撃にどう反応するかが焦点になるの」 ――主人公チーム。 メンバーは【スパイク・スピーゲル】【ガッシュ・ベル】【鴇羽舞衣】【ジン】【小早川ゆたか】【スカー】【ドモン・カッシュ】【菫川ねねね】の八名。 彼らがパロロワ用語でいうメインの『対主催チーム』だ。 そして、七つの名前の間にはいくつもの矢印や言葉が書き込まれている。 『ぁゃιぃ関係』『パヤパヤ』『俺は二人殺した』『私は六人殺したわ』などなど、愉快な有様だ。 「ふぅん。でもコレ……普通に考えたら……」 「ダメ……わたし達が展開予想するのは禁則事項なの」 「あ、とと……ゴメンゴメン」 「でも……全話読んでるアニロワ2nd住民のお友達にサービス。 この『愛に時間を』をしっかりと読み込んでおくと……すんなり最終回に入れる、とは言っておくの」 時間がそれなりに空いてしまったため、記憶が風化している可能性は否めない。 しっかりと復習をすることで、新しい出来事を楽しみ易くなるというものだ。 「後は当然、事実上のラスボスポジに座っている【ルルーシュ・ランペルージ】【ニコラス・D・ウルフウッド】【東方不敗】の三人」 「この三人が目立たない、なんて事は流石に有り得ないわね」 「そして、対主催チームから一人離れて勝手気ままな行動をしている【ギルガメッシュ】。この十五名が現在の生き残りなの」 「最終回は、彼の行動もおそらく注目所の一つでしょうね」 「結城奈緒さんが生きていれば、手伝ってくれたかもしれないけれど……今や主人公チームとの仲は決裂状態」 「一触即発、とはいかないけれど一概に『仲間』と言う事も出来ないわ」 画面に映し出されたのは黄金の王――ギルガメッシュ。 残された参加者の中でも最強に近い力を持ち、圧倒的な力を持つ宝具も所有するキーパーソンである。 「大怪球フォーグラーを叩き落す、マップ一列を焼き払う、数の子を甚振る、ワカメを嬲る、裸になる、猫の仮装をする――とやりたい放題」 「アニロワ2ndでは珍しい序盤からずっと活躍しているキャラよね」 「なの。……ここの参加者は何故か、空気期間がある人が多いの」 「ああ。でも、ずっと空気な人もいるんじゃ。例えばス――」 「杏ちゃん!」 強い口調でことみが杏を咎めた。 今日は明らかに普段よりも『……』が少ないことみではあるが、こんなに強い言い方をするのは初めてだった。 注意された杏も、ビクッと背筋を震わせた。 「ご、ゴメン」 「ス――ではなく……えーと…………そう、いくら陰が薄いからってフリードのことを悪く言っちゃダメ……なの。 動物を苛める事はこのわたしが許さないの……。悪い人は地獄になが――ではなく、多元宇宙迷宮に幽閉するの……」 いきなり話題を切り替えたことみが強い視線を携え言った。 もっとも杏も動物の飼い主なので、ペットを苛めたりはしない。…………たぶん。 だが、ソレよりも杏には気になる事があった。 「フリード」 「そう……フリード、なの」 「ねぇことみ。変な事聞いていい?」 「……?」 「フリードって何だっけ」 「――ッ!?」 そう、ことみの発した『フリード』という単語が何を指すのか、杏は理解出来なかったのだ。 どうも動物らしい事は先程の台詞から理解したのだが、ソレが何の動物なのか完全に失念してしまっている。 「…………フリードは竜なの……白い、竜……。キャロ・ル・ルシエちゃんのペットみたいなもの」 「……あ。そういえば、ゆたかの周りでたまに『キャウ!』とか言ってたような。極稀に」 「まぁ登場自体が結構後半で、しかも支給品ですらなかったし……ぶっちゃけ、今まで何もやってないし……忘れてた杏ちゃんを責められないの」 「これは……や、ヤバイくらい空気ね……最終回で活躍する……のかしら」 「……ちょっと……それは……わたしもコメントし辛いの」 スタジオに本日何度目か分からない重苦しいムードが流れた。 ――空気。 例えば、 『私、あなたにとってどういう存在?』 『お前は……俺にとって空気みたいな存在だよ』 という台詞が恋人同士で飛び交った場合、それは好意的なニュアンスを表している筈だ。 空気とはつまり、『なくてはならないもの』だとか『ある事に疑問を持たないくらい自然なもの』という意味を含むのだ。 間違っても、 『私、あなたにとってどういう存在?』 『お前は……俺にとって箱ティッシュみたいな存在だよ』 なんて返答してしまった場合、このカップルはおそらく長くは続かない。 たとえ、それがぶっちゃけ、似たような事柄を指しているとしても、だ。 こうして考えてみると、空気とは意外と良い比喩なのである。 しかし、パロロワにおける『空気』とは『いてもいなくても関係ない』という場合においてだけ使用される。 俗に言う空気キャラという奴だ。 主催との因縁だけで生き延びた、とまで言われるアニロワ1stの空気生還者ドラえもん。 後半は一気にエクソダス請負人としての力を発揮したものの、最初は極めて地味だったゲイン。 あまりに圧倒的な力を持つチートキャラであった事。 そして、把握が恐ろしく難しいという条件が重なり、200話時点で8話しか登場していなかったスパロワのフォルカ。 第二放送直前まで誰にも会う事が出来ず、それ以降でも終始カップルのおまけ扱いで最終的には主催者側から空気宣告をされたギャルゲロワの白鐘沙羅。 だが、二人は知っていた。 本当の空気キャラとはマジでネタにならないほど地味な連中を指すという事を。 彼らは総じて『空気キャラである事すら忘れるほど空気』なのである。 あまりに不憫なため、ここで名前を挙げる事すら憚られてしまうほどに。 そして、フリードの存在感の無さは明らかに後者だった。 「え、えーと……」 「ゴホ、ゴホゴホゴホ! じ、実は番組の冒頭でも言ってあったけれど……ゲストをお呼びしてあるの!」 「あ……そ、そうだったわね!」 しどろもどろになりながら、話題を変える二人。 これ以上、あの空気竜に触れてはならない。 番組進行係としての指名が高らかと警鐘を鳴らしていた。 「ゲストは二人……でも、その前にインタビューなの」 「こっちも何と二人……妙な因縁で結ばれたアニロワ2ndの名物コンビよ」 「つまり……そう〝名物に美味いもの無し〟という事の裏付け」 「げ……っ」 もう言っていい事といけない事の区別も曖昧だった。 杏はことみに突っ込みたくて堪らなかったのだが、それよりもフリードの話題をコレ以上したくなかった。 故に、あえてのスルー。 のほほんとした顔付きの相方の言葉に対して、聞こえない振りをした。 「……あーもう。はい、じゃあVTRどうぞ。ったく、どこも問題のある奴ばかりだわ……」 ▽ 【参加者インタビュー⑧&⑨】 ●ラッド・ルッソ(シカゴ発ニューヨーク行大陸横断鉄道フライング・プッシーフット号 乗客『白服集団』リーダー・二十五歳) & ●柊かがみ(陵桜学園高等部三年C組・十八歳) ラッド「てかよ。おい、そこの……なんだ、かがみちゃんそっくりの姉ちゃん」 ――は、はい? あのあたし、まだ何も聞いてないんですけど……それにその発言は……。 ラッド「いいからいいから、ちょっとだけ俺に先に質問させてくれ。何で――俺とかがみちゃんだけ、一緒にインタビューな訳?」 かがみ「そうよね。私もソレは気になってたの」 ――いや、ずっと一緒だった訳ですし、そちらの方がいいかと思いまして。 ラッド「そりゃまぁそうかもしれねぇけどよぉ。そこをあえて一人一人に突っ込んでいくのがプロって奴なんじゃないかね」 かがみ「実際、二人揃って……なんて、安易な考えよね。『ラッドみん』なんてぶっちゃけ、あんまりウケ良くなかったのに」 ラッド「そうソレ! 俺がやった事に文句言われるのは構わねぇんだわ。 でもよ。喰われてからかがみちゃんに出てたのはよぉ、俺じゃねぇんだぜ? 気分は良くねぇわな。そこンとこ、忘れねぇで貰いてぇな」 ――(こいつら……)あ、あの、ですね。それでも、番組の編成上の都合というものがありまして……。 ラッド「都合だぁ? おいおいおい、何だよその言い分は――」 かがみ「ちょっとちょっとラッド。それは言い過ぎよ。怖がってるじゃない。せっかく来てくれたんだからあんまり悪くいっちゃ失礼だわ。 あ、インタビュアーさん。答えますんで、質問してください」 ラッド「……ったく、変わり身のお早い事で。分かった分かった、聞いてやるよ姉ちゃん。ヒャハハハハハハ!」 ――(……か、帰りたい)……はい、ではお二人に質問させて頂きます。生前で一番印象に残っている相手はどなたでしょうか。 かがみ「酷い目に遭わされた……という意味ではウルフウッド。それとやっぱりアルベルトね」 ラッド「あーそうだな。俺は相羽兄弟とはそこそこ関わりがあったんじゃねぇか? 殺しきれなかった、って意味ならやっぱギルちゃんと東方不敗のジジィは名残惜しいな」 ――なるほど。お二人が挙げた人物ですとウルフウッド、ギルガメッシュ、東方不敗の三名は未だ生存中ですが。 ラッド「さっさと死ね、いや、今すぐにでも俺に殺させる!って面子だねぇ」 かがみ「私とラッドの経験を合わせると今の生存者とは大抵結構大きめな接点があるのよね」 ラッド「かもな。『狂人』が表に出てた時に主だった連中とは会ってるしな」 かがみ「そうそう。顔を合わせた事もないのは……夫妻とカミナぐらいかしら。ある意味納得出来ちゃう連中ね」 ――『ラッドみん』もとい『狂人』についてお聞きしたいのですが。 かがみ「いざ面と向かって聞きたい、って言われちゃうと困るかも」 ラッド「アレは俺らっぽい、ってだけじゃねぇか? 身体はかがみ、心は俺……って訳でもねぇしよ」 かがみ「でも沢山の人に迷惑を掛けたのは事実だし……なんか、情けないな」 ラッド「まぁ最期は割合綺麗に終われて良かったんじゃねぇか。わざわざ俺が出張ってやったんだから当然だけどな」 かがみ「……かなぁ」 ――思ったんですけど、お二人とも妙に仲良しですよね。 かがみ「えぇー……」 ラッド「おいおいおいおい! んだよかがみちゃん、その反応はよ。スッッッッッゲェ、嫌そうじゃねぇかっ!」 かがみ「いや、っていうかさ。……そういうの本当に勘弁して欲しいんだけど」 ラッド「はぁっ!? 待てよ、何だそりゃあ。俺と相性バッチリって言われたのが気にいらねぇってか!? ツレネェなぁ。こんないたいけな〝お兄さん〟を捕まえてその台詞はあんまりってもんだぜ!?」 かがみ「だってアンタ。お兄さんっていうかおじ――」 ――ッ……は、はいっ! こ、ここまでで結構です! お二人ともお疲れ様でしたっ! かがみ「へ? あたしの台詞まだ途ちゅ――」 ――(この子、不死者になったからかしら。危険発言が多すぎるわ……)いいんです! ありがとうございました! かがみ「んー……イマイチ納得いかないけど。ま、いいか。うん、こっちこそ。あ、可愛く編集してね」 ラッド「おぅ、もう終わりか? 話し足りねぇがまぁ今日はこの辺で止めといてやるか」 ▽ 時系列順に読む Back 〆(弐) Next 〆(肆)
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047 笑う女王と嗤う法皇 ◆dKv6nbYMB 走る少女が一人。その背を追う美女が一人。 その光景だけならば、ある種の趣向を持つ者にはたまらないものかもしれない。 「どうしたほむら!少しは反撃してきてもいいんだぞ!?」 「......」 生憎、いま行われているのは圧倒的な強者による蹂躙。 逃げ回る兎を狼がいたぶりながら遊んでいるようなものだ。 勿論、魔法少女である暁美ほむらはただ逃げ回るだけの兎ではない。 迫りくる氷柱を避けながら、どうにか牽制程度の攻撃は仕掛けようと隙を窺っているが... (反撃していい?冗談じゃない。だったらもっと隙を作りなさいよ) エスデスの実力は本物だ。己の実力に絶対の自信はあるが、慢心は見つからない。 図体のデカさにカマをかけて、一切の攻撃から身を守ろうとしないワルプルギスの夜とは違う。 時間を止めようにも、決定打も持たないいま、下手に魔力を消費したくはない。 悔しいが、いまは背を向けて逃走するしかない。 ほむらは悔しさと苛立ちに顔を歪めた。 対するエスデスは、笑みを浮かべていた。その笑顔は美しくもあるが、同時にドス黒い邪悪さも兼ね備えていた。 「そらそら、このまま何もせずに死ぬつもりか!?」 エスデスは本気を出していない。 アヴドゥルへの攻撃が3割ならば、いまは2割といったところか。 そして、攻撃もあえてぎりぎり避けれるか掠めるかといった具合に調整している。 もちろん、殺さず楽しむためでもあるが、それ以上に (さあ、もう一度見せてみろ!お前の本当の力を!) 先程体験したほむらの能力『時間停止』に非常に興味を持ったからだ。 (どうやってその力を手に入れた?どうやって私と同じ『世界』に踏み込んだ!?) エスデスは知りたかった。愉しみながら知りたかった。 (私は鍛錬で手にしたぞ。お前はどうだ?お前もそうなのか!?それともそういう道具を持っているのか!?) ほむらが観念して時間停止を使い、反撃してきたところを逆に返り討ちにして"私も時間を止めれるぞ"と言い放ってから聞き出したかった。 エスデスの笑みに更にドス黒さが増し、それを確認したほむらの背に怖気が走り、逃げの速度を速めた。 (ふむ、掠り傷程度では音を上げんか。なら...) 2割程度だった力を、4割程度に引き上げようかと考え、この一定距離を保った鬼ごっこを終わらせようとした時だった。 ほむらが逃げる先に見えたのは森林。流石に入り組んだ樹海に入られては探索は面倒になる。不可能ではないし、絶対に見つけれるが。 一瞬だけ、ほむらが森林へと逃げ込む前にこの鬼ごっこに片をつけようかと思ったがすぐに改める。 (いや、森林を使っても逃げられないということを思い知らしめた方が、やつの奥の手を引き出し易いか) ほむらが森林へと逃げ込んだのを確認し、次いで自身も足を踏み入れようとしたその瞬間 「ん?」 ほむらよりも奥の闇から発光する球体が飛来し、エスデスの視界は塞がれた。 なにやら頭上を妙な物体が通ったので振り返ると、エスデスの姿は見えなかった。 撒いたか、という安心感と共に、光を放った敵がいるのではないかという警戒がほむらの足を止めた。 「そこのきみ」 突如かけられる声。物体が発射されたと思われる方向だ。 「安心してくれ。きみに危害を加えるつもりはないよ」 姿を現したのは、学生服に身を包み、前髪が奇妙に垂れ下がった青年だ。 青年の柔らかい物腰と言動に対してもほむらは警戒を緩めない。 この殺し合いの場において、こうも容易く声をかけられるのは危険人物か相当な自信家か、エスデスのようなそれらを両立した者くらいだ。 故に、先程の光体を放ったのはこの男だと確信する。 「......」 「警戒するのも仕方ないか。なら、このデイパックは...おや?」 青年の疑問の声にも警戒は解かず、耳だけ澄ましてみる。 パキ...パキ... (これは何の音?何かが折れる...違う、凍っている。凍る...ッ!) 凍る。その言葉を連想した瞬間、またもほむらの背に嫌な汗が噴き出す。 慌てて振り向くほむらだが、やはりその予感は的中していて。 後ろの木々が順番に、凍らされていたのだ。 突如飛来した物体。それはエスデスに当たったのか?答えは否。 いくら不意打ちとはいえ、その相手は帝国最強の女将軍にして、強者揃いの特殊警察『イェーガーズ』を束ねる将軍・エスデス。 幾多の戦場を駆け、様々な超人・帝具持ちと戦ってきた彼女にとってこの程度のものを躱すことなど造作もないことだ。 だがエスデスはそれを受け止める。身体ではなく氷でだが。 ガガガと派手な音を立てて氷に衝突し、そのまま包み込まれて静止する物体。 (ふむ。この衝撃からして、人体を破壊するには十分すぎるな。悪くない威力だ) なぜわざわざ受け止めたか。簡単だ。観察するためだ。 飛来してきた物体は全部で5つ。どれもが同じような色と形で、例えるならエメラルドのようなものだった。 (これはほむらのものではないな。これほどの物を持っていたなら最初の時間停止の時に使っているはずだ。私を殺すためにな) 勿論、観察しつつもほむらたちへの注意は怠っていない。 ほむらを狙った流れ弾か、こちらを狙った攻撃もしくは牽制か。 おそらく後者だが、エスデスにとってはどちらでもよかった。 ただ、一瞬だけ視界を塞がれたためにほむらの正確な位置がわからなくなったのは痛かった。 「よし。炙り出すか」 彼女の切り替えは早かった。 近くの木を人差し指でピンと弾く。 弾かれた木を中心に、南北へ向かって氷が広がり始める。 (地図は把握している。今からこの氷はB-2森の端に掛けて壁を作ることとなる。壁が出来た後はそのまま西へと浸食し、やがて森は全て凍りつくこととなる) エスデス自身は平地を進み、たまらず出てくるほむらともう一人を確保する手筈だ。 (氷を壊そうとするかもしれんが、私の氷だ。生半可な攻撃では壊せんぞ?) 「さあいくぞ。お前達はどこまで逃げ切れるかな?」 「なんだあれは...氷が周囲の物を凍らせている...!?」 「なんて無茶苦茶な女...!」 木々を浸食している氷がほむら達の退路を塞ぐように壁を模りつつある。 更に見間違いでなければ、氷は徐々にだがほむらたちに近づいているように見える。 「逃げたほうがいいんじゃあないか?」 「いいえ。逃げるにしても、決して道路に出ては駄目。そして、走ればおそらくその気配で見つかってしまう...」 ほむらがゆっくりと歩くよう指示すると、青年も無言で頷き、それに合わせる。 「...しかし、いくらなんでもあの向かってくる氷、遅すぎやしないか?」 「そうやって楽しむ女なんですよ」 先程まで追われていたほむらだからわかる。ああやってジワジワとイタぶるのも好きなタイプであることも。 (...でも、たしかに遅すぎる。私たちの歩くスピードとほとんど変わらないとはどういうことなの?) エスデスは違和感を感じていた。 (妙だな...たしかに私は奴らが逃げやすい程度の早さで凍らせるつもりだったが、いくらなんでも遅すぎる) ほむらの予想は概ね当たっていた。わざと逃げ切れる早さで凍らせ、楽しむつもりではあった。 だが、決して歩いてでも逃げれるようにした覚えはない。 (それだけではない) 己の脈と動悸を測ってみる。拷問について研究する過程で、人体についてはかなりの知識を持つ彼女は、脈と動悸を測れば健康状態がわかる。 (...やはり、少々疲労があるようだ) 普段ならば、いくら小技を使おうとも疲労はない。だが、いまは確かに疲労を感じている。 凍る早さと疲労の問題。 これらを繋げると、ひとつの答えに辿りついた。 (広川め、なにか細工をしたな) 殺し合いが始まる前、広川を脅かしてやろうとデモンズエキスを使おうとしたが、全く出すことが出来なかった。 広川が、自らが語った"異能"を封じる力を持つとすれば、相手の能力を制御できてもおかしくない。 もちろん、帝具のように普通じゃない道具も弱体化させることができるのだろう。 そんな制限をかけるのは、おそらく公平になるようにするためだろうが... (勿体ないことを。死合は互角でないと見る側としては面白くないのは同意だが、そのために能力を制限するのは気に食わん。 制限するくらいなら、近い実力者ばかり集めればいいものを) 広川に対して落胆の感想を浮かべ、制限に関しては一旦保留する。 (さて。ほむらたちを炙り出すのは不可能ではない。というか出来ない自信がない) だが、制限のせいで時間はかかるし、疲労もかなりのものとなるだろう。なにより、制限のことで気持ちが少し萎えてしまった。 それに、エスデスには約束がある。『6時間後にコンサートホールへと集まる』という約束が。 デバイスを取り出し、時間を確かめる。 (もう半分にまで迫っているな。あんまり時間をかけていると間に合わん) エスデスは軍人だ。 もし部下が集合時間を破れば、仮に怪我人だとしても『ソフト拷問コースC』を容赦なくかける。 そんな自分が定めた約束という規律を破りたくはないのだ。 (ほむらとはもう少し遊びたかったが...仕方ない) エスデスがパチンと指を鳴らすと、パリンという音とともに、木々を覆っていた氷が消えてなくなった。 「聞こえるか?追い回したことは謝罪する。すまなかったほむら。だが、おまえの力が知りたかったんだ。悪く思わないでくれ。光弾を撃ったもう一人もだ」 エスデスの言葉に対する反応は無い。エスデスもそれでいいと思っている。 「時間が迫りつつあるので、私はもうお前たちを追わん。私はこれから西のエリアをまわるが、その前に聞きたい。広川を殺したあと私の元へ来ないか? ああ、断っても殺しはせん。アヴドゥルにもキッパリと断られたよ。30秒待つから、その気がなければなにも返事をしなくていい」 答えはわかっているがな、と思いつつほむらたちの反応を待つことにする。 あっというまに30秒が経過する。 「わかった。それがお前たちの答えだな。私はこれで失礼する。では、放送後にコンサートホールでまた会おう」 まるで、来るのは当たり前だと言わんばかりに言い放ち、エスデスは悠然と歩き出す。 (あいつは、必ず私のもとへ来る。コンサートホールには来なくとも、必ずいつかは現れる。 強力な戦力を求めてか、排除すべき人間と判断してかはわからんがな) 後者ならもっと楽しめそうだな、と期待を胸に膨らませる。 (だが、敵として私の前に現れたときは覚悟しろよ?必ずその能力を手に入れた経緯を引き出してやる。 奥の手であろうものだ。そう易々と話したくはないだろう。だが、私は私の欲求を満たすならばなんでもするぞ。 お前の歯を砕いてでも 片目を潰してでも 頬に風穴を開けてでも 両手両足の爪を剥がしてでも その平たい胸をさらに平たくしてでも 腕を切り刻んででも 両脚を切り刻んででもだ。 それほどお前の能力には興味を持ったのだ!) 傍から見れば冗談にしか聞こえないだろう。だが、彼女は本気だ。いつだって本気だ。 彼女のドス黒い笑みは、まだ絶えていない。 【B-1/一日目/黎明】 【エスデス@アカメが斬る!】 [状態]:高揚感 疲労(小) [装備]: [道具]:デイパック、基本支給品、不明支給品1~3 [思考] 基本:殺し合いを愉しんだ後に広川を殺す。 0:協力者を集め六時間後にコンサートホールへ向かう。 1:その後DIOの館へ攻め込む。 2:殺し合いを愉しむために積極的に交戦を行う。殺してしまったら仕方無い。 3:タツミに逢いたい。 [備考] ※参戦時期はセリュー死亡以前のどこかから。 ※奥の手『摩訶鉢特摩』は本人曰く「一日に一度が限界」です。 ※アブドゥルの知り合い(ジョースター一行)の名前を把握しました。 ※DIOに興味を抱いています。 ※暁美ほむらに興味を抱いています。 ※暁美ほむらが時を止めれる事を知りました。 ※自分にかけられている制限に気付きました。 「本当に去ったようだが...諦めたのか?」 「いいえ。言葉通り、時間が迫っているのでしょう」 どうにか一難去ったことに、ほむらは胸を撫で下ろす。 (まどかに危険をもたらす可能性は高いけれど...いまの私にはあいつを仕留める決定打と呼べるものがない) ほむらのデイパックには帝具『万里飛翔マスティマ』があるが、飛翔以外の使い方がよくわからないものに運命を委ねる気にはならなかった。 「では、自己紹介といこう。わたしの名は花京院典明。きみの名は?」 「...暁美ほむらです」 物腰柔らかく対応する花京院に対してもほむらは警戒を解かない。目の前の男が危険かどうか判断するには情報が足りないのだ。 「おっと、怪我だらけじゃないか。どれも重傷ではないが、塞げるものは塞いでおいた方がいい。治療道具は?」 「持ってません」 「なら病院へ向かおう。情報交換は道すがらということで...」 「ま、待ってください」 先導して病院へと歩を進めようとする花京院を慌てて呼び止める。 病院に戻ること自体は賛成だ。だが、その前に知らなければならないことがある。 「花京院さんは、ここに来るまでに誰かに会いましたか?」 もしも花京院が誰かと出会い、分かれて行動しているなら。その人物が頼りになる人物なら。 会っておきたいと思うのが心情だ。 だが、ほむらの期待はあっさりと崩される。 「いや。わたしはA-4の武器庫の方から来たんだが、まだ誰にも会っていない」 「...そうですか」 誰とも会っていないということはそれだけ手に入れられる情報が少ないということだが、反面嬉しいことではあるのかもしれない。 (少なくとも、エスデスの行先にはまどかはいなさそうね) 「では、病院へ向かうということでいいかな?」 (回収し忘れていた医療器具のこともあるし、エスデスとは別の方向。それに、おそらく多くの参加者が向かうはず...) 「ええ。お願いします」 花京院が先導して歩き、距離を開けてほむらがついていく。 その道すがらで簡単な情報交換を行う。 「美樹さやかに巴マミ、佐倉杏子。それがきみの友達の名前か」 「はい」 ほむらはまどかの名前をあえて出さなかった。まだ花京院を警戒しているからだ。 「花京院さんは知り合いはいるんですか?」 「わたしが知っているのは一人...DIO様だけだ」 「ディ、DIO?」 「知っているのかい?」 「い、いえ。地図に屋敷が載ってましたから」 思わぬところで思わぬ名前を聞かされたため、うっかり動揺してしまったほむら。 当然と言えば当然だろう。なんせ、エスデスとアヴドゥルという人間が言うには危険人物である者の名なのだから。 (...でも、DIOが危険人物というのはアヴドゥルという人だけの情報。DIOを知る人から聞いた方が確実といえば確実ね) 「そのDIOという人はどんな人なんですか?」 ほむらの問いに、花京院は考える素振りを見せる。 やがて、思いついたように振り向くと、右手の甲をほむらに向けて差し出した。 「いいかい、この手を見ていてくれ。驚かないでくれよ」 ほむらは、言われた通りに差し出された手を見つめる。 ―――ブンッ 「ッ!?」 ほむらは己の目を疑った。確かにいま、花京院の腕から緑色の別の腕が浮き出ているのだ。 「...やはり見えるか。これは、生まれつきの体質でね。普通の人には見えないんだが...なぜかいまは見えるようになっているらしい」 「体質...?」 そんな体質は聞いたことが無い、とほむらは思う。だが、魔力は感じられないため、エスデスと同じく魔法少女に関係するものではないようだとも判断する。 驚いた反面、なぜいま見せたのかという疑問がほむらに湧いてくる。 「...わたしは、他の誰にも見えないこの力を自覚した時、誰とも打ち解けようとはしなかった」 花京院が静かに語りはじめる。 「町に住んでいるとたくさんの人と出会う。その誰しもがなにかしらの繋がりを持っていた。 小学校のクラスの○○くんのアドレス帳は友人の名前と電話番号でいっぱいだ。父には母がいる。母には父がいる。 わたしは違う。この『力』が見える人は誰一人としていなかった。 両親は好きだ。だが、気持ちを通い合わせることはできない。この『力』が見えない人と真に気持ちが通い合うはずは...ない。 自分には理解者など現れない...そう思っていた」 そこには怒りや悲しみ、『力』への恨みといった感情は一切なく、ただ事実を述べているようにほむらの目には映った。 「だが、DIO様は違った。彼はわたしの力を知りながら、優しく手を差し伸べてくれた。 『花京院くん。恐れることはないんだよ。友達になろう』。そう言ってくれた。 彼も同じ力を持っていたのだ。 嬉しかった。わたしは独りじゃなかったんだ。そう気づいたとき...心の底から安心したんだ」 花京院の独白を聞き終えたほむらは思った。 似ている。 魔法少女になったために、他者から疎遠に為らざるをえなかった巴マミに。 自分の身体が人間とは違うものとなったために、想い人に気持ちを伝えることすらできなかった美樹さやかに。 そして...一人の人間に救われた、他ならぬ自分自身に。 花京院が嘘を吐いているようには見えなかった。 全てを鵜呑みにするわけではないが、彼が語ったDIOという男については嫌な印象は持たない。 アヴドゥルという人が危険だと言っているのは、単に勘違いかもしれないし、もしくはDIO自身に恨みがあるのかもしれない。 利益による対立。信頼関係の拗れ。疑念による闘争。 ほむら自身、そういったことは何度も経験してきた。 もっとも、DIOが本当によからぬことを企んでいて、花京院が騙されている可能性もないわけではないが。 「すまない。話し過ぎたな。きみの手当を急がなければならないというのに」 「...いえ。DIOって人のこと、好きなんですね」 「ああ。尊敬しているし、憧れてもいる。とても大切な人なんだ」 傍からみれば、ちょっと行きすぎじゃないかと思うところがあるかもしれない。 だが、ほむらはそう思えなかった。ほむら自身、花京院が語るDIOへの感情と似たようなものをまどかに感じているからだ。 (いずれにせよ、DIOにもアヴドゥルにも会ってみなければわからない、か) そうしてほむらは花京院に警戒はしつつも、来た道を引き返すこととなる。 探し人であるまどかから離れていく道だということも知らずに。 (上手くいったようだな...) 花京院典明は心の中でほくそ笑む。 彼がほむらを助けた理由。 肉の目による洗脳が解けた?肉の目が植え付けられつつも正義の心に目覚め、弱者を放っておけなかった? どれも違う。 正解は、『利用するため』だ。 花京院の方針はなんら変わっていない。 DIOを生存させる。それだけはゆるぎないのだ。 ☆ 時は遡る。 入手した戦利品を整理しながら花京院典明は考える。 先程は出会いがしらに少女を殺してしまったが、それは失策だったかもしれない。 この会場に集められた数は、DIOと自分を除けば総数70。 もしかしたら何人かはDIOの部下もいるかもしれないが、DIOに忠誠を誓った日がまだ浅い自分が考えるだけ無駄だとも思う。それは本人から聞くしかあるまい。 1対1ならまだしも、武装した一般人が10人も集まれば、それだけでも十分に脅威になる。 四方八方を囲まれてショットガンでも放たれれば、いくらスタンド使いでも切り抜けるのは難しい。 そんなこともありえる殺し合いだ。情報は何より大切になる。 念のためにハンカチで注意を逸らして殺したが、その前に少女から情報を聞き出しておけばよかったと切に思う。 いや、殺さずとも『ハイエロファントグリーン』を体内に忍び込ませて人質にするのもよし。 お人好しを装い、人数が増えたところで一網打尽にするのもよし。使い道はいくらでもあったのだ。 (...まあ、過ぎたことだ。仕方ないか) 次からは気をつけようと決め、デイパックの中の物を掴んだ時だった。 ―――うおわあああああ! 突如響いた悲鳴。 花京院は慌ててデイパックから手を放し、周囲を確認する。しかし、人の気配は全くしない。 念のためにスタンドで周囲を探るが、やはり誰もいない。 気をとりなおしてデイパックを探ると ―――あっ、おいあんた!そのまま俺をひっp また声がした。 花京院は慌ててデイパックから手を放し、周囲を確認する。しかし、人の気配は全くしない。 念のためにスタンドで周囲を探るが、やはり誰もいない。 気をとりなおして再びデイパックを探ると ―――話は最後まで聞けぇ!いいか、とりあえず俺をここからひっぱり またまた声がした 花京院は(以下略) ―――...お願いします。そのまま手を離さず、どうか私をここから取り出してください。 いまにも泣きだしそうなその声を聞いて、ようやくデイパックに原因があることに気が付いた。 (刀か。...美しい刃渡りだ) デイパックから取り出したのは一振りの刀。 刃物に関しては大した知識を持っていない花京院だが、その刃渡りには素直に関心した。 ―――あ~、ゴホン。とりあえず出してくれたことには礼を言おう。あんたが用心深い性格なのはわかったが、いまは俺を持ったままにしててくれ。 今度は刀を握ったまま周囲を見回してみる。やはり誰もいない。 ―――わかったか?今までの声は全部おれってことだよ (信じられんな...) 意思を持たないはずの刀が喋る。にわかには信じ難いが、こうして喋られている以上認めるしかない。 とりあえずそう己に言い聞かせることで、一応の納得をした。 ―――では気をとりなおして...ジョースターを殺せ!ポルナレフをブッた切れ!承太郎をまっぷたつにしろ! 「......」 ―――お前は達人だ...剣の達人だ。誰よりも強い、なんでも切れる! 「さっきからなにを言っている?」 ―――あ、あれ?おかしいな、なんで操れねえんだ!? 「...なんだかよくわからんが、お前を持っていてもロクなことにはならなそうだ」 花京院がとりあえず剣を地面に置くと、やかましい声は一切聞こえなくなった。 しばらくデイパックを探っていると、今度は一枚の紙が出てきた。 『――アヌビス神の暗示のスタンド―― 500年前この剣を作った刀鍛冶のスタンドが剣に憑りついたもの。 主な能力は以下の三つになる。 ○物質を透過して、斬りたいと思った対象だけを斬ることができる ○一度受けた攻撃を憶え、その度に力と速さが強化されていく ○精神を乗っ取る ただし!このスタンドは、一般人でも一騎当千のスタンド使いでも精神を乗っ取れるが以下の制約をかけられている。 ○アヌビスが乗っ取れるのは、対象の合意があるか、気絶している時だけ。 ○アヌビスの精神が表面化している時の記憶は対象者の精神が戻ったときも引き継がれる。 ○精神を乗っ取れる時間は10分。また、連続して乗っ取ることはできない。 以上』 「......」 どうやら、この刀剣は殺し合いという場においては当たりの部類に入るらしい。 だが、花京院典明にとっては当たりといえる代物ではなかった。 戦えば戦うほど強くなる刀剣。確かに強力だ。 だが、花京院に剣道の心得はない。そんなド素人が強力な刀を振ったところでなんになる。それならば己のスタンドで攻撃した方が早い。 とはいえ、こんな刀に己の運命を任せられるかといえば答えはノゥ。不安しかない。 ならば、このまま放置すればいいかといえばそうもいかない。 もし、この刀を先程の少女のような一般人が拾えば、それはそれで厄介だ。 むしろ力が無いぶん、意識を委ねて襲ってくるかもしれない。 以上のことから下した答えは (破壊するか) 己の背後に『ハイエロファントグリーン』を出現させる。 掌に破壊のエネルギーを溜め、狙いを定める。が (待てよ...) 己のスタンド能力とアヌビスへの制限を顧みて、考え方を改める。 思考が固まると、アヌビス神を拾い、語りかけた。 ―――ひ、ひええええ~!破壊するのだけはご勘弁を~! 「喜べ。わたしなら、お前の力を存分に発揮させてやれるぞ」 ―――へっ? そして舞台は現在へと戻る。 花京院は、利用できそうな者を欲した。できれば弱者がよかった。 まどかから奪ったデイパックを荷物を移し替えた後、奈落へと捨て、身を隠しやすい森林を進んでいた。 しばらく歩いていると、前方から戦闘音のようなものが聞こえた。 『ハイエロファントグリーン』を先行させ、様子を窺うと、氷を放っている女とそれから逃げる少女が目に映った。 どちらが弱者か。言うまでもない。 『ハイエロファントグリーン』を自分のところまで戻し、少女が森林へ入ってくるのを待つ。 少女が入ってきた機を見て、エメラルドスプラッシュを発射。 あの厄介そうな女を仕留めれればよかったが、生憎一発も当たらなかった。 結局、あの女は去っていったのは幸いだった。 おまけに、少女が氷に振り向いた瞬間、花京院は『仕込み』を滞りなく行えていた。 ―――しゅるしゅるしゅる 音はしていないが、そんな擬音が聞こえそうな動きで、注視しても気づきにくいほどの細い糸が少女のスカートへと入り込む。 『ハイエロファントグリーン』は、人体に潜り、操ることができる。 糸が少し入り込んだだけでは操れないが、スタンドが完全に入り込めば意識すらも奪うことができる。 そうなれば、もう花京院の人形と化す他ない。 そのまま人形として使うなり、アヌビス神に乗っ取らせるなり、様々な用途で利用されることとなる。 わざわざスタンドを出したのも、脚色を加えて長々と話をしたのも、糸が入り込んでいることに気付いていないか確認するためだった。 また、DIOの名をわざわざ出したのは、少女の反応を確認するためだった。 ジョースター一行の関係者なら敵意を剥きだしにしてくるはずであり、DIOに組するものなら交渉次第で手を組むこともできる。知らない場合はそのまま利用すればいい。 少女は『知らない者』だったようなので、花京院はトコトン利用し尽くすことにした 花京院典明はとにかくツイていた。 まどかを撃ったあと、もし南下していれば後藤に食い殺されていただろうし、平地を進んで東へ向かっていれば承太郎に遭遇していた可能性が高い。 まどかから情報を得ていれば、ほむらの前でボロを出していた可能性もある。 もしエスデスを操ろうとすれば、たちまち見破られて返り討ちに遭っていただろう。 更に彼自身知らないことだが、彼は偶然にもほむらの最大の弱点を突いていたのだ。 ほむらの時間停止は、他者に触れながら行うと、触れた相手もまた止まった時の中を動くことができる。 ただし、これにはほむらが直接触れたものだけではなく、間接的に触れられていた場合も含まれる。 現に、巴マミは予め己の魔法で作ったリボンを気づかれないうちにほむらの脚に結び付けておいたことで、時間停止による拘束から逃れていた。 花京院もまた、既に『ハイエロファントグリーン』の糸でほむらに触れているため、彼女の時間停止の効果を受け付けないのだ。 花京院は心中で嗤う。己の幸運に気付かぬままに、一人嗤っていた。 【B-1/森林/一日目/黎明】 【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ(新編 叛逆の物語)】 [状態]:疲労(中)、ソウルジェムの濁り(小) 全身にかすり傷 [装備]:見滝原中学の制服、まどかのリボン [道具]:デイパック、基本支給品、万里飛翔マスティマ@アカメが斬る! [思考]: 基本:まどかを生存させつつ、この殺し合いを破壊する 0:花京院に警戒しつつ、病院に戻って医療品を取りに帰る。ただし長居するつもりはない 1:まどかを保護する。 2:協力者の確保。 3:危険人物の一掃 4:まどかの優勝は最終手段 5:DIOは危険人物ではない...? 6:コンサートホールに行く……? [備考] ※参戦時期は、新編叛逆の物語で、まどかの本音を聞いてからのどこかからです。 ※まどかのリボンは支給品ではありません。既に身に着けていたものです ※魔法は時間停止の盾です。時間を撒き戻すことはできません。 ※この殺し合いにはインキュベーターが絡んでいると思っています。 ※時止は普段よりも多く魔力を消費します。時間については不明ですが分は無理です。 ※エスデスは危険人物だと認識しました。 ※花京院が武器庫から来たと思っています(本当は時計塔)。そのため、西側に参加者はいない可能性が高いと考えています。 ※花京院のスタンド『ハイエロファントグリーン』の糸が徐々に身体を浸食しています。ほむらはそのことに気付いていません。 【万里飛翔マスティマ@アカメが斬る!】 翼の帝具。装着することにより飛翔能力を得ることが可能。 翼は柱を破壊する程度の近接戦闘は描写から可能であり、無数の羽を飛ばして攻撃することも出来る。 飛翔能力は三十分の飛翔に対し二時間の休息が必要である。 奥の手は出力を上昇させ光の翼を形成し攻撃を跳ね返す『神の羽根』。 【花京院典明@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】 [状態]:健康 [装備]:額に肉の芽 [道具]:デイパック、基本支給品×2、油性ペン(花京院の支給品)、アヌビス神@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース(まどかの支給品) 花京院の不明支給品0~2 まどかの不明支給品0~2 [思考・行動] 基本方針:DIO様を優勝させる。 0:病院へ向かい、医療器具を探す。留まるかどうかは後で決める。 1:ジョースター一行を殺す。(承太郎、ジョセフ、アヴドゥル) 2:他の参加者の殺害。ただし、今度からは慎重に殺す。 3:DIO様に会いたい。また、DIOの部下が他にもいるかどうか確かめたい。 4:ほむらを利用するため、病院へと向かい信頼を得る。病院に参加者がいれば情報を得てからほむら諸共殺害したい。 ※参戦時期は、DIOに肉の芽を埋められてから、承太郎と闘う前までの間です ※額に肉の芽が埋められています。これが無くならない限り、基本方針が覆ることはありません。 ※肉の芽が埋められている限りは、一人称は『わたし』で統一をお願いします。 ※この会場内のDIOが死んだ場合、この肉の芽がどうなるかは他の方に任せます。 ※『ハイエロファントグリーン』が他人に憑りついたとき、意識を奪えるかどうかは他の方に任せます 【アヌビス神@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース(まどかの支給品)】 500年前この剣を作った刀鍛冶のスタンドが剣に憑りついたもの。 主な能力は以下の三つになります。 物質を透過して、斬りたいと思った対象だけを斬ることができる 一度受けた攻撃を憶え、その度に力と速さが強化されていく 精神を乗っ取る ※アヌビス神の制約は以下の通りです アヌビスが精神を乗っ取れるのは、対象の合意があるか、気絶している時だけ。 アヌビスの精神が表面化している時の記憶は対象者の精神が戻ったときも引き継がれる。 精神を乗っ取れる時間は10分。また、連続して乗っ取ることはできない。その10分間は身体の所有者はアヌビス神の精神を押しのけることはできない。 通り抜ける力は使用可。 ※参戦時期はチャカが手にする前です。 時系列順で読む Back 揺れる水面のアイオライト Next 進撃のパラサイト 投下順で読む Back オフライン Next 進撃のパラサイト 039 時計仕掛の女 エスデス 056 すれ違い 暁美ほむら 097 我が侭な物語 006 始まってしまった物語に、奪われたままの時に 花京院典明
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正義の汚水 自動運転のバキュームカーに乗り、ターゲットに汚水をぶちまけて汚す。 指定金額分の損害を与えればクリア。 ターゲットの前でLTで停車して、RTで放水するだけ。特に難しい事はない。 制限時間が無く乗っている車は非常に頑丈な上にアクティビティ中は車から引きずり下ろされることもないので、集まってくる警官はそれほど気にしなくても良い。 クリア特典 武器の命中率向上1 Suburbsの正義の汚水LV3をクリア 武器の命中率向上2 Suburbsの正義の汚水LV6をクリア 食料品店/酒屋のディスカウント1 Red Lightの正義の汚水LV3をクリア 食料品店/酒屋のディスカウント2 Red Lightの正義の汚水LV6をクリア 汚水処理トラック Suburbs・Red Light両地区の正義の汚水クリア コメント LTで停まって汚水を放水するだけ。停まってる間に警官が張り付いたら少し動かして撃退する。 - 2008-10-27 12 48 01 なんか引きずり下ろされたんだが…バグ? - 2008-12-26 14 57 32 Red Lightは達成率目当てでない限りやる必要ななさそう。店舗強盗を20回やったらディスカウント所か無料になるし - 2009-02-10 00 51 27 100%クリアや実績気にしない人は無視しても良いと思う。そもそも食料自体あまり使う場面無いですし・・・ - 2009-06-01 14 39 47 指定された物以外にも、車や人にかけるとそこそこ稼げてクリア短縮になる・・・かも? - 2010-01-11 18 04 50 というか、指定された物以外もかけないと金額が貯まらない - 2010-10-16 22 59 29 一番簡単なアクティビティですね. - 2013-08-22 01 15 04
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【作品名】―(株)大盛産業― 【ジャンル】RPG(Windows100% 2007年01月号収録) 【世界観】この世界の英雄は工場で作られる 【参考】究極砲NAMIHEI:惑星マスオンの最強兵器 『幾つもの惑星を葬ってきた最強砲』(ゲームのボス解説より) この砲の直撃のダメージは999 究極砲NAMIHEI自身の耐久力は2000なので自分の砲に2発耐えられる 【名前】正義の味方 【属性】人外 【大きさ】成人男性並み 【攻撃力】銃装備、射程・範囲は成人男性3人が2m間隔で立っていて全員に当てる事が出来る程度 弾速は機械レーザーと同等、10発撃てば究極砲NAMIHEIを破壊できる威力、弾切れ無し 美少年:少年、投げ付けて敵を攻撃する消耗アイテム、5個所持 究極砲NAMIHEIと同等の威力、射程は10m程、機械レーザーの半分ほどの速度 【防御力】究極砲NAMIHEIの1/3の威力の攻撃に1発だけ耐えられる 【素早さ】サイボーグ改造を受けて身体能力が強化された人間を超えた身体能力の人間を遥かに上回る移動、反応、戦闘速度 vol.138 868格無しさん2023/02/01(水) 23 20 03.31ID rwcaQI+x 禍が抜けたので正義の味方、Q太郎、比良まさよしをちょい再考察 正義の味方 △Q太郎 お互い決め手なし ○比良まさよし 攻防差勝ち Q太郎 △比良まさよし お互い決め手なし 正義の味方=Q太郎>比良まさよし 349格無しさん2018/10/27(土) 16 05 35.84ID 0j/uhaDu 正義の味方考察 思考発動の壁で連敗、その上にも素早さで上回られて当てられない シャークトパス以下からは普通に勝てる (思考発動の壁) 正義の味方>シャークトパス
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作品を通じてソラは成長を続けていきます。 この作品での成長を通じて最終的にたどり着くソラの正義は一つの言葉に集約されます。その言葉とは 希望 です。これはラクスの正義である「絶対者の管理による平和維持」にもリヴァイブの正義である「試行錯誤による平和の獲得」とも違う意味を持つものです。 ラクスの正義でもリヴァイブの正義でも得ることの出来ない「希望」とは、何なのでしょうか? 「絶対者の管理による平和維持」によって得られるものは縮退的世界における平和維持になります。ラクスによる統治は「箱庭」という言葉が象徴するように、その平和を享受できる人は一部の人々に限定されています。 これは世界に限られた資源がないという制約がある以上仕方のないことです。富を全ての人々に均等に分配したとして、全ての人が飢えに苦しまなくて良いほど世界には資源がないのです。 そのため、統一連合はその統一の過程において、富の集中を行い、まず一部の活力を再建することを目指そうとしています。そして、得られた活力を元に世界を再建する。 そして、それは平和の名の下に行われなければならない。 この平和を守るために必要なのが絶対者であり、ラクスは絶対者の象徴としての位置に甘んじています。 つまりラクスの正義では弱者の切捨てが発生しているのです。それそのものはどの政権でも少なからず行われていることです。しかし、ラクスの統治では弱者に対する扱いをごく一部の人々で決めてしまっています。 本来は議会によってその取り扱いが決定されるのでしょうが、実質ラクスの決定によって議会が形骸化しているというのが現状です。 対して、「試行錯誤による平和の獲得」によって得られるものは弱肉強食による取捨選択による発展的世界における平和維持になります。リヴァイブの目指すのは、統一連合という単一の支配構造の打開になります。 前述のように統一連合による富の分配の不均衡は必要悪であるといえます。リヴァイブをはじめとする多くのレジスタンス活動はこの不均衡によって実質的被害をこうむる側の人々の抵抗活動であるといえます。つまり、一般的なレジスタンスの要求はただ一つ「富の分配構造の改革」です。 その中でもリヴァイブの正義は「富の分配構造の改革」の方法論を議会による決議にするべきだという主張をしています。つまり統一連合の実質的能力を議会に持たせるべきであるという主張です。 この方法による弊害は「必ずしも一番効率的な方法ではない」ということが上げられます。議会による決定にはそれだけで多大なコストがかかり、そのため救える人々すらも救えない場合が発生しますし、なによりお互いの利害関係を合致させることが出来なければ、戦争という事態につながる可能性すらあるのです。 ではソラのたどり着く正義である「希望」とは何なのでしょう? それは「人々の思いにより変わり行く世界」です。 ソラは物語の中で多くの人々に会い、その人々が各々の立場で世界を良くしようとしている姿を目の当たりにします。 ある者は、ゆがめられた民主主義を正そうと、多くの本を執筆し、ある者は紛争で傷ついた人々を寝る間も惜しんで治療し続け、ある者は戦いつづけるレジスタンスに資金供給を続けるために、耐え難い屈辱に耐え続けています。 ソラは彼らの思いが世界を変えていくことを徐々に信じることが出来るようになっていきます。そして、世界は人々の思いを吸い取るように、徐々に変わっていくのです。 これが「希望」です。 ソラの正義はレジスタンスほど具体的でもなければ、ラクスほど自らの正義に自信はありません。 彼女の心にあるのは一人一人の力は小さくても、それが集まって大きな力になれば世界を変える力になるということ。 もう一度だけ人に自分達の手で平和な世界を作るチャンスを与えて欲しい。 そのために弱い、小さな人たち一人一人の声にも耳を傾けて、対話して欲しい。 議会や賢者に全てを委ねるのではなく、一人ひとりが考えて行動しより良い未来を作るために。 ソラは人を信じています。対話しあう事で人は互いに信頼を育み共に世界を作れると。 ラクスともきっと手を取り合えると。 ソラは最後にラクスにこの希望を語ることでしょう。 それこそが、近作の最大のテーマとなります。 ソラに希望を語るにたる経験をさせることが近作の目標といえるでしょう。 ソラの正義につながるSS 1000の富と20人の民 小麦を食べるもの 想いと力